Kensuke Esato,M.D.
江里 健輔
 
江里 健輔
山口大学名誉教授
山口県立大学学長・理事長
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癒やしのそよ風(ほうふ日報)

治療方針裁定委員会
2005年10月28日

 年を経るにつれて、病気の総合デパートと言われるように一人の患者さんが高血圧、糖尿病、脳梗塞、白内障、変形性膝関節症など多数の病気を背負うようになりますので、異なった専門分野の医師の技術と知恵を必要とします。従って、高齢者にとって総合病院は、どこでも診てくれるので非常に都合が良いことになります。しかし、このような総合病院の利点が十分生かされているとは言えないのが現状です。そこで、当センターでは治療方針裁定委員会を設けました。当センターに入院され、一つの診療科で診断・治療が完全に済む場合は問題ありませんが、いろいろな合併症を生じますと、いろいろな専門家の意見を聞いて治療しなければならなくなります。
 今の医学は高度に進歩していますので、全ての病気が判るほど広い専門知識を持っている医師はいません。たとえば、前立腺ガンは泌尿器の先生が専門ですので、この先生に受診すれば十分ですが、息が苦しい、あるいは、心臓がどきどきするような症状が生じた場合には呼吸器専門医、あるいは循環器専門医の助けが必要となります。また、薬も各専門分野の先生がそれぞれ処方されるので、多額域の診療科を受診されている患者さんは10種類以上の薬を飲まなくてはならない羽目になることがあります。そこで、他債域の診療称に受診されている患者さんについて各科の専門医が連携して、各分野の治療法が正しいか、間違っていないか、.薬が重複して処方されていないかをチェックすれば安心ですが、現状はどこの病院でもなされていません。
 当センターの治療方針裁定委員会はこのような弊害を防ぐために設けられた組織です。担当医が専門外の疾患であるために対応出来ないと判断した場合、委員会に上申します。委員会では上申された患者さんについて、それぞれの専門医が集まって現在行っている治療が十分であるかどうかを検討し、適切なアドバイスを担当医にします。場合によっては「治療チーム」を設け、その患者さんの治療に当たります。
 現在の医療の一番の欠点は昭和40年代ごろより専門化の必要性が叫ばれて、専門医ばかりとなり、人間をトータルに診れる医師が少なくなってきたことです。その結果、専門医間の狭間にある病気に対応出来なくなったことです。少しでも専門分野外になると「自分の専門分野でない」という理由で患者さんを全く診察しなくなりました。この委員会が発足して2年経過しますが、担当医にとっても、患者さんにも極めて有意義であるようです。現在受けておられる治療で納得出来ないような点がありましたら、どうぞ遠慮なく担当医にご相談下さい。各専門医の医師が集まり、患者さんの状態を全人的に検討するようになれば、真の医療を提供することが出来ると思います。



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