Kensuke Esato,M.D.
江里 健輔
 
江里 健輔
山口大学名誉教授
山口県立大学学長・理事長
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その他

知事命令による離島・へき地への医師派遣 NEW
2006年01月09日

知事命令による離島・へき地への医師派遣
     山口県立総合医療センター
          院長 江里 健輔

医師不足、とりわけ医師偏在が嘆かれ、対策が講じられないのは何故か?
医師に対する医療の質、経済の質への満足な待遇がなされていないからである。
私が勤務している医療センターは約十五万人を背景とした病院であるが、外科医院という標榜で手術を行っている診療所はゼロであり、産科・婦人科の標榜で産科を扱っている診療所は3つしかない。これらの疾患を持つ患者の多くはわれわれの病院を受診するので、多くの患者と限られたスタッフで、患者側にも,医療側にも不平・不満が蓄積し、毎日がもやもやした状態である。ある医師は待機など(このシステムが一般人に理解されていない)を含めて24時間勤務の状態が続けば医療人としての倫理が保てない、子供の教育費がままならぬなどの理由でさっさと開業、あるいは時間的に余裕のある病院へ転勤する。急性期病院のスタッフは益々不足するばかりである。そのような現実を無視し、厚労省は離島・へき地への医師派遣を知事命令で行い、1月の通常国会に提出し、2007年度からの実施を目指すという(朝日新聞1月4日より)。対象となる大病院として比較的人員に余裕のある県立、国保、日赤などが上げられている。何故か大学病院や国立病院は対象となっていない。これらの病院は知事権限の枠外であるため、対象とならないのであろうが、人員に余裕のあるのは大学病院や大都会の国立病院である。これらの病院は最新医療設備を備え、医療人としてのリーダー的立場が堅持出来る病院であるので、多くの医師が勤務を希望し、医師不足など考えられない。これに対し、人員に余裕のある地方の公的病院にはこれらの環境などまったくない。派遣を命令されても、限られたスタッフで診療しているので、一人の欠員でその診療部門はマヒする。厚労省は命令にしたがった病院には補助金を増額したり、逆に減額したりする方策を考慮しているとのことであるが、派遣を命令された医師への配慮がほとんどない。待遇、医療事故などを考えると、離島・へき地への勤務を命令されるのであれば、開業あるいは個人病院へ勤務した方が得策と考えることが悪いとは決めつけられないであろう。
就職希望が多い東京のような大都会の一流病院、例えば、ガンセンターなどへ就職するには、現在の条件以外に離島・へき地に勤務したことを条件に加えるとか、公的病院を定年で退職した医師に対し破格の待遇で、ある一定期間勤務させるような方策を、医師地域偏在是正に当てるのはどうであろうか?



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