Kensuke Esato,M.D.
江里 健輔
 
江里 健輔
山口大学名誉教授
山口県立大学学長・理事長
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癒やしのそよ風(ほうふ日報)

救急車の利用は適正に
2006年01月14日

           救急車の利用は適正に
                 山口県立総合医療センター
                       院長  江里 健輔



当センターの救命・救急センターを受診される患者さんは年々増加し、平成17年度は2万人を超えようとしています。さらに、119番通報による救急車の出動件数も増えてきています。消防の救急業務の最大使命は、急を要する患者さんを一刻も早く病院に運び、救命することにあるので、救急車の出動が多いことは良いことです。しかし、防府管内の救急車数、スタッフには限りがありますので、その利用が適切でないと、本当に救急車を必要とする重症な患者さんが搬送されなくなり、助かる命も失いかねません。
全国の救急出動件数は平成16年に初めて500万件を突破し、503万件に達したと報道されています。これは4年で100万件増えた計算になるそうです。背景には高齢化したこと、あるいは、三世代が一緒に一つ屋根の下で住んでいる時には、両親、祖父あるいは祖母の経験的な医学知識で様子をみるようなことが出来ましたが、核家族になり、医学的知識を持っている人が家族にいなくなり、不安ばかりが生じて、ちょっと症状が出れば救急車を利用することも一因のようです。一方では、日本では救急車は無料で利用できますが、外国では有料です。AIU保険会社2000年の報告では1回救急車を利用すれば、ニューヨークで25000円、バンクーバ4000円、パリ3000円です。この無料が救急車を安易に利用している側面も否定できません。
私の経験では救急車を利用しなかったので、尊い生命を失ったという事例は少ないようです。ちなみに、平成17年9月に当センターの救命・救急センター来院患者さんは1569名でそのうち、何らの治療も必要のない0度95人(6.1%),注射あるいは薬が必要な沒x1182人(75.3%),入院が必要な度238人(15.2%),心不全や心・肺停止を来すような重症。度55人(3.5%)でした。これらの内、救急車を利用された患者さんは222名で、その内訳は0度3人(1.4%),沒x88人(39.6%),度97人(43.7%),。度34人(15.3%)でした。このデータからみれば、91人(41%)は救急車を利用する必要はなかったようです。勿論、患者さんには軽症か重症か判らないのですから、不安で救急車を利用されるのはやむ得ないことで、病気の緊急度や重症度を知るようなシステムが作られていない行政にも責任があります。しかし、救急車に連絡する前に「かかりつけ医」に相談してみるなどの配慮も必要かなと感じます。何故ならば、防府市の救急車業務には限度がありますので、本当に救急車を必要とする重症患者に対応出来ない場合も生じてくる可能性があるからです。最近は「かかりつけ医」を持つことが勧められています。緊急時に「かかりつけ医」に連絡し、適格な判断を仰ぎ、救急車を利用すれば、真の救急医療体制が築かれるでしょう。



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