Kensuke Esato,M.D.
江里 健輔
 
江里 健輔
山口大学名誉教授
山口県立大学学長・理事長
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その他

欲しい、「地域医療を担っている意識
2006年01月14日

      欲しい、「地域医療」を担っている意識
                 山口県立総合医療センター
                         院長江里 健輔



一県一大学(医学部・医科大学)体制になって久しい。確かに医師数は増えてきた。しかし、医師は足りない。各病院は患者のニーズに応えるために専門医を配置し、一方では、患者の自己意識の向上でインフォームド・コンセントをはじめ患者さんへの作業量の倍加で、従来では数人で事足りた診療科が数十人の医師を必要となり、供給が間に合わない事態に陥っている。特に、きつい、きたない、厳しいなど悪条件が重なった診療科の医師不足は深刻である。
山口県のような地方では医師派遣は一大学に大きく依存しているため、教授の有り様が県の医療を大きく影響する。地域医療に無関心の人が臨床教授に就任すると、「教授が定年を迎えるまで暗黒だ。じっと我慢だ」と冗談とも本音ともつかぬ会話が行き交うこともしばしばある。しかし、大学が独立行政法人化され、付属病院の経営が問われはじめるとともに、「良い医師が帰学させられた」とか「大学より遠く離れた医療圏の病院へ配置換えになった」とか将来に光が見えぬ会話に変わってきた。大学付属病院近隣の急性期病院が大学病院のライバル病院となり、地域医療に関心のある教授でも、人事にこれまでとは違ったコンセプトを導入せざるを得なくなった。
大学医学部に課せられた役目は教育、研究・診療のバランスを保ちながら、これらを発展させ、さらに、地域医療に貢献することである。大学付属病院は優れた医療人の養成、高度先進医療の開発のために存在するのであって、これらの理念を投棄すれば、一般病院となんら変わることはない。
独立行政法人化され、大学経営も容易ならざる状況であることは承知しているが、大学本来の姿を見失うことのないよう不安を持ちながら、期待しているところである。


日本医事新報社



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