Kensuke Esato,M.D.
江里 健輔
 
江里 健輔
山口大学名誉教授
山口県立大学学長・理事長
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ふれあい毎日(毎日新聞)

百壽者になりたいならば(2006,2,5) NEW
2006年03月18日

           百壽者になりたいならば
                  山口県立総合医療センター
                     院長 江 里 健 輔

元気で長く生きたい、これは多くの人の望みです。医学・医療の進歩がこれを現実の事にしてしまいそうです。2005年9月で我が国の百壽者(百歳以上)は25,554人で、この数字は5000人に一人の割合で、また、女性が男性の4倍に相当するそうです。50年後には50人に一人の割合で、百壽者が増えると予想されています(メデイカル・トリビューン、2006,1,5)。百壽者になることが幸せかどうかは別として、百壽者になられた方の特徴について興味あるデータが慶応大学広瀬信義氏より報告されています。
東京23区に住んでいる、百壽者1700人のうち、514人を対象に1999年より5年間追跡調査しています。それによりますと、その殆どの人達が現在の生活に「幸せ感」が溢れるようにほとばしっている人で、男性は一匹オオカミ的なタイプで、自分の気が向いたことを好きなようにする人、また、女性では外向的で、第三者と積極的に付き合い、物事をきちんとやれるゴッドマザー的な人が多かったとのことです。確かに、医学的には抑うつなど後ろ向きの気分は幸せ感に富んでいる人にくらべ、早死、冠動脈疾患、2型糖尿病、機能障害などになる危険性を高めます。百壽者のほとんどが100歳になるまで大きな病気をしたことがない、どちらかと言えば贅沢な食事を取らず、低栄養(アルブミン値が低い)傾向にあるようです。ちなみに30%の方は無病であり、糖尿病を患ったことのある人は極めて少なかったようです。
哺乳動物の一生涯での脈拍数は約20億回数とされています。したがって、鼠のような小さい動物は一分間の心拍数が多いですから、寿命が短く、大きな動物のそれは少ないのですから一般に寿命が長いのが通説です。その証拠にマラソン選手やお相撲さんのように若い時に過激な運動を強いられた人の平均寿命は短いことが判っています。それに対し、法然上人80歳、親鸞上人90歳、蓮如上人85歳のように酒も飲まず、早寝早起き、植物性蛋白を中心に摂取した僧侶は長生きされていることから、寿命には生活様式が強く影響しています。人間の寿命を左右する因子は運動、食事、喫煙などの生活習慣が50%, 人間関係や住宅などの環境因子が20%,遺伝子20%、医療10%とされています。医学・医療がこれほど発達しても寿命に及ぼす影響はたかだか10%と驚くほど少ないのですが、生活習慣の寿命への影響は極めて大きいのです。生活習慣の乱れから生じる典型的な病気は糖尿病、動脈硬化です。運動しない、過食する、肉などの動物性蛋白を沢山取る、タバコを吸う、アルコールを好きなだけ飲むというひしだらな生活で糖尿病にかからない方が不思議なのです。糖尿病そのものはそれほど恐ろしい病気ではありませんが、糖尿病が原因で生じる動脈硬化症が怖いのです。動脈硬化症は脳梗塞・心筋梗塞、腎不全などあらゆる病気をきたします。いささか不謹慎な発言ですが、病気で死ねればよいのですが、これらの病気ではなかなか死ねません。苦しみだけが数年間続き「生活の質が悲惨なほど低下する」病気です。
酒が飲みたいと思った時、牛肉をたらふく食べたいと思った時、その後に控えている苦しみを思い起こし、自ずから節制して欲しいものです。



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