Kensuke Esato,M.D.
江里 健輔
 
江里 健輔
山口大学名誉教授
山口県立大学学長・理事長
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癒やしのそよ風(ほうふ日報)

紹介してもらう時 NEW
2006年04月01日

             紹介してもらう時
                山口県立総合医療センター
                       院長江里 健輔


山口県立総合医療センター院長としての随想はこれが最後となります。赴任し、中国・四国地方でいち早くセカンド・オピニオン外来を設けて、4年が過ぎました。いろいろな勉強をさせて頂きましたが、最後に残念な話をしなければなりません。
72歳の女性です。ご主人が食道ガンと診断され、手術出来る状態ではないので、放射腺治療を始めましょうと言われてB病院を紹介されたそうです。奥さまは当然自宅近くにあるA総合病院だろうと安心していたところ、隣の市にあるB総合病院であったそうです。それで
「自宅の隣にあるA病院が近いので、何かと便利なので、その病院を紹介してくれませんか」
とお願いしたところ、その先生が
「その病院には高度なレントゲン治療装置はありませんよ。ご主人のことを真剣に思われるのであれば、隣の市にある病院に行くべきです。その病院の先生とは昔からこんいですから、私からよく頼んでおきます。いろいろと配慮してくれると思います」
奥さまはA病院にすぐれた治療装置がないのであれば仕方ないと不本意ながらB病院にご主人を連れて行き、入院・治療を受けられました。そんな折り、近所の知人がA病院で放射線治療を受け、退院されたという話を聞き、どうも納得が落ちないためセカンド・オピニオン外来を訪ねられ
「院長先生、本当にA病院の放射線装置はB病院のものと比較して高度ではないのでしょうか?毎日、目の前にあるA病院を通って、隣の市にあるB病院に通うのはどうも納得できないものですから。それに急変した時にはなんと言っても近くが便利ですから」
「担当の先生はそんなことを言われましたか。AとB病院でそんなに違うとは思いせんが。何かの聞き間違いではありませんか?」
「いいえ、確かに『A病院の放射線治療装置はあまりすすめられませんなあー』、と言われました。本当なのでしょうか?私には信じられませんが」

多くの患者さんは他の医療機関あるいは診療所に紹介してもらう時、希望を述べることなく、医師の言われるままに任しておられます。普通は、医師は患者さんのことを思い、公平・中立に医療機関を紹介していますが、残念なことに、上述のようなことは極めて稀であります。このようなことは患者さんが申しでた病院が@競争相手である場合、A懇意な医師がいない場合、B逆紹介の可能性がない場合(紹介した病院で治療が終わった時、再び紹介元に紹介されること)C技量が不十分な病院である場合などに生じます。Cの場合、紹介しないのは当然ですが、その他の場合は決して許されないことです。政府は患者さんに満足して頂ける医療を提供するために、種々の連携を推進していますが、遅々として進まないのは病院と病院、病院と診療所が互いに競争相手で、患者さんの奪いあい関係にあるからです。そこには患者さん本位の医療は行われ難い状態にあります。私が大学病院に勤務していた時、
「俺は絶対山口大学病院に患者を紹介しない。大学へ紹介したら、その患者は絶対戻って来ないから」と何の臆面もなく告げられたものです。その先生の顔を眺めながら、この先生はどのような心の持ち主だろうといぶかったことがあります。
医師から他の診療所あるいは病院へ紹介される時には医師が紹介しようとする病院あるいは診療所が意に添わない時には希望をはっきりと、しかも堂々と申し出て、満足する医療を受けるようにして欲しいものです。



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