Kensuke Esato,M.D.
江里 健輔
 
江里 健輔
山口大学名誉教授
山口県立大学学長・理事長
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その他

して貰うのは当然(医事新報、2006,8,5,p98) NEW
2006年08月07日

して貰うのが当然
       山口県立大学理事長(学長)
            江 里 健 輔


空港でチェックインする長蛇の列に車椅子とその付き添い5人が遅く到着し、あっという間にチェックインを済ませました。車椅子の人は中年の女性で左下肢にギブスをつけておられたので、多分、骨折し、歩行出来ないと見受けられました。このような方々を手厚く保護することは当然ですので、空港のスタッフが丁寧に対応されている姿に感動させられました。日本における身体障害者に対する対応はまだまだ充分とは言えませんが、この光景をみていささかの違和感を感じ得ませんでした。それは家族らしき付き添いの方々の態度です。
車椅子の後に5人が続いて歩いており、車椅子はスタッフが押しています。何故、車椅子に5人もの方々が続いてチェックインする権利があるのでしょうか?しかも、この5人の方々は長い間順番を待っている長蛇の列の人々に会釈することもなく、優先してチェックインを受けるのが当然であるとしか思えない振る舞いに、もう少し謙虚な姿があってもいいのではないかという思いも湧き上がってきました。
今の日本には弱者と強者が決められ、問題が生じると内容の是非ではなく、最初から弱者が正しく、強者が悪い、弱者を救えという社会公式に定められてしまいます。医療界でも無理難題を患者さんが申し出られた場合、どう考えても医療側には手落ちはないと思っても、全て「患者さん中心の医療」、「患者さんを大切にする医療」のもとにじっと耐え、言いたいことも言わず、貝のように口を真一文字に閉じ、時が過ぎ去るのをひたすら待っているのが現状です。ある病院長が患者さんに不愉快を与えたことには素直に謝罪するが、事が医療側に非がないと判断した場合には「当病院に非はありません。どうしても納得して頂けないようであれば、お好きなように対応して下さい。病院としてこれ以上対応するつもりはありません」と毅然とした態度を取ると教えてくれました。このような態度が正しいかどうかは議論のあるところですが、そのプロセスに費やすエネルギーを考えると中立的に、厳正に対応する組織が望まれる今日この頃です。



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