Kensuke Esato,M.D.
江里 健輔
 
江里 健輔
山口大学名誉教授
山口県立大学学長・理事長
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癒やしのそよ風(ほうふ日報)

"飲酒"事故と健康管理 NEW
2006年09月28日

“飲酒”事故と健康管理
      山口県立大学理事長(学長)
             江里 健輔


本年8月25日より9月12日の間に危険飲酒致死傷害罪が20件以上発生し、問題になっていますが、いろいろな面で「人権保護」という名目で甘い日本を象徴しているような事件で悲しみを通り過ぎて、憤りを覚えます。20年前に奇妙な話題に物議を醸した事があり、その時は笑って過ごしましたが、それが今頃になって笑えない内容でびっくりしています。それは飲酒運転し、事故を起こした時、即座に逃げ、 酔いが覚めた後届け出た方が良いか、即座に警察に届け出た方がよいかでした。
私の知人の友人が飲酒後一休みして、4時間後に運転し、自宅に帰ろうとした時、横断歩道で老齢の女性をはねたそうです。彼は下車し、その女性の具合を見て、たいした外傷がなく、生命に別状がないと判断した後、飲酒の影響が残っているので、これはまずいと思い、その場を離れたそうです。酔いが覚めた後、警察に出頭し、その女性も軽い傷害で、その上、自ずから出頭したということで軽い罪で済んだということでした。何故、即座にその場で警察に連絡しなかったのかと聞いたところ、「飲酒運転だから、まずいと思った。当然、その女性が致死的であれば、人間として許されないので、その場を離れず、直ぐに警察に連絡した。それだけは信じてくれ」と話していたということです。その話を聞いた全員が「そんな、馬鹿な。正直が馬鹿を見る典型的な話だ」と一笑して終わりました。

それがどうでしょうか?
飲酒運転事故は危険運転致死傷害罪に適応されれば20年以上の禁固になりますが、ひき逃げは7年6ヶ月以上の禁固です。従って、飲酒で事故を起こした場合には逃げた方が「得」というなんともやりきれない法律です。20年前に私の友人の知人の行動は全くの知能犯であると言えます。このような法律でこの最近ひき逃げ事故が増えているそうです。「悪いものは悪い」という観念が薄れ、起こした犯罪に悔いるよりなんとか理屈をつけて少しでも罪を軽くしようと全知全能をかけ、最後には起こした交通犯罪を軽くするにはどうしたらよいかを即座に判断するような国民に低落してしまったようです。
飲酒運転で事故した人は「絶対、自分は事故を起こさない」という自信があったので、飲酒運転している人が多いようです。この話で丁度、手遅れの患者さんを思い出しました。手遅れの患者さんは「自分は絶対ガンには罹らない、ガンとは無縁だ」という変な自信の持ち主が多いようです。その患者さんの顔を見て、「どうしてそのような発想が出来るのかなあ」と不思議ですが、健康は当たり前で、病気になるのがおかしいという気持ちの表れのようです。病気は本人の問題で、他人にそれほど迷惑をかけず、交通事故と同一視出来ませんが、発想が同一であることに危険な思想を感じさせます。社会で次々起こる悲惨な出来事は自分には関係ないと考えるより、何時、何処でも自分に生じても不思議ではないと思うべきです。「他山の石」ではなく「自分の石」とする心がけが必要です。



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