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硬い血管が元のようにしなやかになる? 山口県立大学理事長(学長) 江里 健輔
生活習慣病が話題になっています。それは心筋梗塞や狭心症、脳卒中など恐ろしい血管の病気で、その主な原因は血管がぼろぼろになり、硬くなる「動脈硬化」であることが判ってきました。これは過剰な酒や喫煙を止め、規則正しい生活し、運動することである程度予防できます。 これまでは一旦動脈硬化になれば、元のようなしなやかな血管に戻ることはないとされていましたので、「ならないように」、「ならないように」と教えられて来ました。 それが最近は少しずつ変わってきました。 長期の禁煙で硬くなった血管が元のようにしなやかになるという研究報告が出されたのです(日本循環器学会ニュースメール、2007,4,10)。それによりますと、アイルランド、トリニテイ大学(ダブリン)のノウ・アメッド・ジャトイらによれば、全く高血圧の治療をしていない18歳から80歳の患者さん554人(女性は56%)を現在喫煙中(150人)、喫煙したことのない人(268人)、以前に喫煙したことのある人(136人)に分け、さらに、以前に喫煙したことがある人を1年以下禁煙した、1年から10年禁煙した、10年以上禁煙した、の3つのグループに分けて血管がどうなるか調査しました。その結果、動脈硬化を示す検査データは現在喫煙している人、以前喫煙し、現在は禁煙している人、全く吸っていない人の順により高かったと報告しています。彼らはこの研究は長年タバコを吸っていても、禁煙することで硬くなった血管が元のようにしなやかになる可能性を示すものであると述べています。 しばしば、長年タバコを吸ってきたから、今さら止めても無意味だ、とうそぶいている人がおられますが、この報告をしっかりと受け止めるべきでしょう。 喫煙者はたびたび 「我々はタバコを吸って、沢山の税金を支払っているので、吸わない人々に比べて國に大きく貢献している。それなのに、喫煙する人への思いやりがない」 と主張されています。 これは全くの事実と違う話です。 このような政府からのデータがあります。 タバコを吸うことによる年間の余分な医療費は1999年度1兆2936億円、これにタバコが原因で発生した火事の損失を加えれば5兆円を超え、これに対し、タバコによる税収は2億3221億円とされています。ちなみに、タバコ1箱270円の税金は170.70円です。1日に2箱吸う人は1年間に12万4100円の税金を払っていることになります。このように計算すると一生涯に払う税金は莫大なものになります。禁煙で健康が保たれ、家計にゆとりが出来れば、豊かな人生を過ごすことが出来、どのような面から考えても喫煙はプラスになるものは何もありません。 愛煙家の皆さん、今からでも遅くはありません。 タバコを吸うのを止めて 「硬くなった血管をしなやかな血管にもどしましょう!!」
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