Kensuke Esato,M.D.
江里 健輔
 
江里 健輔
山口大学名誉教授
山口県立大学学長・理事長
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風のとき(宇部日報)

このクレームは理不尽 NEW
2007年06月27日

             クレームは理不尽かどうか
                   山口県立大学理事長(学長)
                        江里 健輔


6月11日21:00のNHKニュースで、学校はさまざまなクレームについて、弁護士に対応を求めたり、保険に加入するような組織作りがなされつつあるという報道があり、びっくりしました。教育界も医療人と同じ道を辿っておられるな、というのが偽らざる気持です。
ある開業医で、看護師さんが静脈注射をし、注射液が洩れて、肘の間接部が約3cmぐらい腫脹し、患者さんは猛烈な痛みを訴えられたそうです。その医師は栄養剤が血管から漏れたぐらいでそんなに痛みを訴えるのはおかしい、少しオーバーと思いながら、
「どうもすみません。看護師の不注意で注射液が漏れ、痛みを感じさせて」
と、謝罪したそうです。その患者さんはしばらくして
「痛みはなくなりました。静脈注射をすれば、洩れることだって時にはありますよ、気になさらないで下さい」
と云って、診療所を後にされたそうです。その1週間後、その患者さんが来院され
「院長先生、過日、注射がもれて痛みが生じ、先生は『すみません』と謝罪されましたが、その謝罪はその後どのような形になさる積もりでしょうか」
と詰問されたそうです。その先生は予想もしなかった要求に唖然とし、続く言葉がなかったとのことです。
次に、これは私のセカンド・オピニオン外来を受診された患者さんの話です。
患者さんが申されるには
「ある病院で造影剤の注射をされるレントゲン検査を受けました。私は造影剤のアレルギーがありますので、その事を医師に申し出ていました。検査後、高い熱が出て、排尿が少なくなり、2週間入院しなければならなくなりました。退院の時、熱の原因を訊ねましたところ、『造影剤の副作用です』と人ごとのように云われ、なんだかむかむかして、腹が立ち、院長にその旨を伝えました。その院長は『私どもの病院は山口県でもトップの病院です。不服でもあれば、訴えて下さい。話合いをしてもむだでしょう』と云われ、取り付く島もありません。本当に、病院のミスではないのでしょうか」
前者は医療人の、後者は患者さんの訴えです。それぞれ一理ありますが、このような場合、多くの関係者はただ黙って、泣き寝入りされているようです。勿論、我慢出来ず、弁護士さんに相談される人もいるでしょうが、いずれにしてもその代償は決して安くはありません。
私は私の専門である日本心臓血管外科学会にこのような医療にたいするクレームが正当か、理不尽なものかを裁定するような第三者機関の設立をお願いし、数年かかって、組織が出来ました。
教育界には父兄や保護者から申し出を中立的な立場より判断してくれる組織がありません。現在では教員が対応されていますので、その対応に疲れ果て、教育どころではないと聞き及んでいます。教育委員会は教師側の立場であると見なされていますので、裁定する組織に適していません。
そこで、教育の有識者からなる「クレーム裁定委員会」を設け、いろいろなクレームをこの委員会で判断し、非があれば、適正に是正することで、教員が本来の教育に専念できる環境が整備されると思いますが、如何でしょうか?



画像
(雨が欲しそうに見えるハンゲショウです。)



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