Kensuke Esato,M.D.
江里 健輔
 
江里 健輔
山口大学名誉教授
山口県立大学学長・理事長
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癒やしのそよ風(ほうふ日報)

昼寝の効用 NEW
2007年07月05日

昼寝の効用
       山口県立大学理事長(学長)
              江里 健輔


昼休みに体を鍛えるということで、ジョギングしたり、歩いたりされる方がおられますが、体力向上はともかく、午後の仕事の能率が上がるのだろうかと他人事ですが、心配になることがあります。
今年の夏は例年にない暑さが予想されます。過日、山口県立大学で環境に関する公開講義があり、講師であった武蔵工業大学環境情報学部中原秀樹教授は「今年の夏は気温が体温以上になることが3回ある」と語っておられました。気温が体温以上になりますと、体熱がどんどん放出されますので、直射日光を浴びると脱水症状を来たし、非常に危険な状態になります。これを防ぐには直射日光がもっとも強い時間帯の外部での活動を避けることです。昼寝もその一つです。最近、昼寝が冠動脈(心臓の筋肉に血液を送る血管)の病気で死亡する割合を減少させる効果があるという奇妙な研究結果が発表されました(Naska A,etal.Arch.Intern.Med.,2007;167:296-301)。これによりますと、成人ギリシャ人(男・女)2万3,681人を平均6.32年間追跡した結果、冠動脈で死亡する危険度は昼寝の習慣がある群が昼寝の習慣がない群に比べ34%低く、とくに定期的に昼寝をする人では37%と著しかったということです。更に面白いことは、働いている男性で、昼寝の習慣がある人の危険度は極端に低かったそうです。
地中海沿岸や中南米諸国のような暑い地方では、午後3時までは休憩時間をとる習慣があり、スペイン語でこれを「シエスタ」と云い、社会にも公認されています。すでに多くの方が経験のある事と思いますが、昼食後は、無性に眠たくなります。これは食事を取ると、消化管の機能が刺激され、沢山の血液を必要としますので、体内の血液が消化管に集まり、脳への血液が少なくなります。一方では、脳の満腹中枢が食事で刺激され、睡眠物質が働きます。これらが昼食後に眠たくなる原因です。このような現象は動脈硬化症などで脳血流が少なくなっている高齢者に強いようです。人の眠気には半日リズムがあります。大きい方は午前2〜4時で、小さい方は午後1〜4時です。昼寝はこの午後のリズムと重なっているのです。時間帯と交通事故発生との関連を調査したアメリカとイスラエルの6052件の結果によれば、事故発生数には二つのピークがあり、その一つは午前2時、次のピークは午後2時であったそうです(yahoo,2007,6,19より)。
これらの報告から、昼寝の効用は明らかです。昼寝をすれば、脈拍が減少し、血圧が下がるので、昼寝をした後には頭がすっきりし、活動力が湧き出て、疲労が回復し、午後からの仕事の効率が良くなることは多くの方が経験されているでしょう。通常、昼寝は浅い眠りですので、15〜20分の昼寝であれば、あまり無理なく目覚めることが出来ます。
異常な暑さが予想されるこの夏に、快適な日常生活を送るためには、昼休みに運動するのではなく、ちょっとした昼寝を取ることが、冠動脈死が減少するという報告も併せて、有効ではないでしょうか。



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