Kensuke Esato,M.D.
江里 健輔
 
江里 健輔
山口大学名誉教授
山口県立大学学長・理事長
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その他

パッシング NEW
2007年08月03日

先生へのバッシング
      山口県立大学学長
          江里 健輔


劇作家山崎正和氏が某新聞に「現代医療を象徴する『インフォームド・コンセント』が自己防衛に使われていると感じることがある」と述べています。『インフォームド・コンセント』の目的の一つは受けたい医療を患者さんに選択して貰うための情報提供ですが、このように解釈されると、医療人としてある種の戸惑いを禁じ得ません。
この数年、問題が生じると最初から理由もなく「善者」と「悪者」に分け、とかく、「先生」と称する人は「悪者」で、バッシングする人たちが「善者」であるとする構図がまかり通っていると思われて仕方ありません。
本当に責任は「先生」と称する人にあるのでしょうか?
いくら時間をかけて、懇切丁寧にインフォームド・コンセントしても、結果が予期に反した場合、必ず「説明を受けていない」、「十分な説明がなされていない」というバッシングを受ける事が多くあります。この人たちはさらに地域の有力者に頼み、有利に解決しようと画策されます。有力者は事実を詳細に自分で調べることなく、多くの場合は医師が悪いと責めたてられます。最近はこのような構図が学校教師におよぶようになりました。教師はバッシングを理不尽と思いながら、なんら手だてもなく、ただ、黙って耐えるしかありません。かつて教える人、即ち「聖職者」は社会から尊敬され、教師も高貴なる者の責務に自己を犠牲にしてでもひたすら身を捧げたものです。しかし、このような風潮は完全に廃れました。医師も教師も専門家としての立場から職務を遂行しても、患者あるいは保護者、所謂、クレーマーから一方的かつ過望なクレームが寄せられる度に疲弊し、権威と責任を放棄せざるを得ないようになってしまいます。
「先生」たたきの悪循環をなくし、「先生」を全うに評価する第三者機関が欲しいものです。結局、最終的なおつりは国民が受けることになるのですが・・・。



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