Kensuke Esato,M.D.
江里 健輔
 
江里 健輔
山口大学名誉教授
山口県立大学学長・理事長
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風のとき(宇部日報)

メール医療相談
2007年08月25日

メール医療相談
      山口県立大学理事長(学長)
               江里 健輔


医師会主催のシンポジウム「医療クライシス」が開かれ、その討議の中で「大学病院がコンビニ化し、大学病院に受診するような病気でもない患者さんが受診するので、大学病院の医師が疲弊し、本来の研究・教育に支障を来している。患者さんへの教育が必要である」という発言が本紙に掲載され、(宇部日報、7,23,2007)もっともだと賛成しながらも、ちょっと待ってと言いたくもなりました。
私ごとで恐縮ですが、これまでの経験を生かし、少しでもお役に立ちたいとホーム・ページ(http://k-esato.com/)を立ち上げ、メールによる医療相談を受けつけています。全国からいろいろな相談がありますが、その中に次のような相談がありました。
その1:夫は現在50歳です。結婚して18年たちます。結婚した時、夜尿が毎晩のようにあり、時々漏らすことがありました。この状況は誰にも相談出来ず、精神的に大変疲れます。私自身、隣で夫が寝返りをうっただけでも、漏らしたのでないかとすぐに目が覚めて、グッスリ寝ることができません。どうしたら治るか、どこに受診したらいいのか教えて下さい。
その2:14歳の中学女生です。3年ほど前から股関節あたりにしこりがあります。最近になってすごく気になり始めました。直径1cmほどの大きさです。これは病気でしょうか?

これらの質問は医師からみればたいしたことではないですが、当人および家族にとってみれば他人には相談出来ない辛い悩みであります。最初の質問は医師に対してさえ相談するにはあまりに屈辱的なものであり(医師にとっては日常的な問題なのですが・・)、悶々とされていた奥様の姿が目に浮かびます。後者の質問は医師に受診するほどの問題ではないが、心の片隅に不安となって宿っているものです。経過が長いこと、しこりに変化が見られないことより、全く心配ないしこりであることは医師としては常識ですが、この質問者は思春期の子供のことでもあるし、悩みぬかれたことでしょう。
このように、一般の方に豊富な医学的知識を持っていただく事は困難で、大変時間の要ることで、医療人が少しずつ根気よく指導することが必要です。
日本医師会では『かかりつけ医』」持つことを推奨しています。私がある講演で「『かかりつけ医』をもって下さい。それが自分の身を守る一番大切なことです」と話ました。その時、「私の『かかりつけ医』」は休みの日には電話を切って連絡ができません。どうしたらいいでしょうか?」と質問されました。これには私も思わず返答に詰まってしまいました。日本医師会の「医師の職業倫理指針」には『かかりつけ医』は患者に対し、常に対応出来るように地域医療の連携体制を整備し、これをあらかじめ患者に知らせ、その不安をなくすように心がけていなければならないとあります。しかし、現実はこの指針からかなりかけ離れています。私が思うのは、月に2〜3度診察している患者さんには緊急時の対応をきちんと教えておいて欲しいものです。
一方、患者さんは上記のメール相談のように病気の程度がわかりませんので、医師はメールや携帯電話番号などを知らせておいて、患者さんの不安を取り除くように努める必要があるのではないでしょうか。このような事を少しずつ確実に積み重ねることで、患者さんの医療知識も高まるでしょうし、大學病院のコンビニも軽減され、また、患者さんもそれを医師に求めるべきです。




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