Kensuke Esato,M.D.
江里 健輔
 
江里 健輔
山口大学名誉教授
山口県立大学学長・理事長
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風のとき(宇部日報)

地域社会に生きる NEW
2007年10月30日

地域に生きるのではなく、地域社会に生きる
              山口県立大学理事長(学長)
                    江里 健輔


それぞれの地域には年に1〜2度の地域清掃日があり、朝から地域住民が総掛かりで環境整備に努めておられる姿に遭遇します。どこの地域でもそうでしょうが、やむを得ない都合で参加出来ない場合には負担金を徴収されることですまされているようです。
こんな話があります。毎度、負担金を払って、悪びれた様子もなく、それで良しとし、全く参加しない家があり、地域の集会ではいつもこのような家への処遇、例えば、不参加負担金を大幅に値上げするなどの案が出されますが、いろいろな事情でそれを実行することも出来ないまま見過ごされているそうです。勿論、突発的な理由で参加出来ない場合もあるでしょうが、毎度の不参加となると、いささか納得しかねます。負担金を払っておけば参加しなくてもよいという問題ではないと思います。清掃という仕事を通じて、一緒になって汗を流す、会話を交わすなどで日常接しない人を知り合い、交流を深めることに意義があるのです。参加しないことは地域に住んでいますが、地域社会に住んでいるとは云えません。
「遠い親戚より近くの他人」という諺がありますが、老夫婦、独居老人ともなれば、地域社会に生きて、近所と付き合いをし、積極的に、常日頃より人間関係をつくっておくことはますます重要となってまいります。例えば、主人が風呂場に脳卒中で倒れた場合、奥さん一人の力で主人を浴槽から出すことは不可能です。人間関係が保たれている他人が隣に住んでおられれば、電話で、時には大きな声で助けを求めることが出来ます。私の家では電話の上に隣の家の電話番号を記し、緊急を要する時に助けを求められるように常日頃より準備しています。
しかし、良好な人間関係を作ることはそんなに易しいことではなく、若い時からの地道な努力が必要です。
日本私立大学連盟は2006年に「大学生活の中で大切なことは何であるか」というアンケート調査をしたところ対人関係の項目が2002年と比較して減少したと報告しています。それによると、2002年より増えた項目は
(1)きちんと講義に出席すること
(2)確実に進級・卒業すること
(3)良い就職先を見つける
などであったのに対し、減った項目は
(4)良い友人・先輩を得ること
(5)自由な時間を楽しむこと
(6)人脈を作ること
なのでありました。
大學の全入時代で学生の意識が変化し、専門性を持たねば就職出来ないという危機感が強まってきたためかもしれませんが、一方では、人間関係を構築しようとする気持が薄れつつあるとも取れます。専門家は「大学に入りやすくなったことで『大卒』の肩書の価値が低下しているためであるとコメントしています。高齢化社会になればなるほど、上手に人間関係を保ことが必要されることを考慮すれば、このような目先の学生気質が大変不安になります。
ふだんから上手な対人関係る作ることに手を抜けば、冒頭にあげたように地域での清掃という基本的な行事でさえお金で済ませ、参加しないことに後ろめたさを感じない人が増え、人と人との疎外感がますます強まることになるでしょ



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