Kensuke Esato,M.D.
江里 健輔
 
江里 健輔
山口大学名誉教授
山口県立大学学長・理事長
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癒やしのそよ風(ほうふ日報)

薬はほどほどに NEW
2007年11月04日

            薬を飲むのはほどほどに
                 山口県立大学理事長(学長)
                           江里 健輔


私が山口県立総合医療センターで、セカンド・オピニオン外来を担当していた時のことです。
78歳の女性が
「先生、今、肝臓が悪く、さらに血圧が高く、膝も痛いので、この病院で治療を受けています。それぞれの先生より11種類の薬を貰っています。膝の痛みはさっぱりよくなりません。こんなに飲まなくてはならないのでしょうか?最近では薬の副作用が報告されていますので、心配です」
と、机の上に貰っておられる薬を並べられました。それらを丹念に調べてみますと、確かに飲まなくてはならない薬と神経をすりへらしてまで飲まなくても良い薬もあります。早速をそれらの薬を必要に応じて飲まなくてはならない順に選択してあげました。そして
「2週間後にもう一度、報告に来て下さい。その結果により、また、考えましょう」
と話して別れました。
2週間後、
「先生、膝の痛みもずっと楽になり、胃のもたれもなくなり、体もとても調子良いです」
笑顔で外来を訪ねて来られました。
「良かったですね。長生きしようと思われるなら、薬は出来るだけ飲まないようにすることです。5つ以上薬を飲むと、副作用が50%出るという報告もありますよ。特に、膝の痛みなどは加齢の影響が大きいので、薬で治そうとするのではなく、まず、生活スタイルを変えて治すようにすべきでしょうね」
「どんなことをすればいいのですか?」
「そうですね。いろいろな方法があり、その人に適したものを見つけるべきでしょうが、一般的には歩くのが一番でしょう」
「でも、痛くて、歩くどころじゃありません」
「そうです、痛いでしょうが、それでも、すこしずつ、少しずつ慣らさなければ、最期は寝たきりになります。膝はぞくに第二の心臓と言われていますので。膝が痛い程度では命は取られませんから」

最近、このような報告があります(Moore TJ,etal.Arch.Intern.Med2007;167:1752-1759)。
米国内で発生し、米食品医薬局(FDA)に報告された重篤な薬剤有害事象の件数が1998年の3万4,966件から2005年には8万9,842件と実に2.6倍に、この内、致死性薬剤有害数は5,5191件から1万5,107件と2.7倍にそれぞれ増加しています。興味あることは新薬として象徴されるバイオテクノロジー関連薬剤に多く、それに関連した重篤副作用数は1998年の580件から2005年の9,181件と15.8倍と天文学的な増加です。
新しい薬、新しい治療などには効能報告が沢山ありませんので、どのような有害事象が起こるか推定出来ません。医学の進歩、発展にはある程度はやむを得ないことかもしれません。問題は何時、どのような場合にその医療をやめるかです。
100%安全な医療はありません。受ける患者、授ける医療人、いずれも不完全だからです。しかし、可能な限りゼロに近づくことは出来ます。薬を飲む量を少なくすることは、まさに有害事象を少なくなり、健康を保つ一つの方策です。







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