Kensuke Esato,M.D.
江里 健輔
 
江里 健輔
山口大学名誉教授
山口県立大学学長・理事長
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癒やしのそよ風(ほうふ日報)

死語となった「罰があたる」 NEW
2008年01月19日

死語となった「罰があたる」
     

正月早々あまり良い話ではないですが・・・私の両親は悪いことをしたらとか道に外れたことをしたら必ず「罰があたるよ」と事あるごとに教えてくれたものです。それで悪いことをしてはいけない、人に迷惑をかけてはいけないと言われて育ってきました。
昨年は年金記録問題、食品偽装問題、給食費未払い問題など、最初は「そのような事実はない」がやがて「スタッフが勝手にしたもので、首脳部は関与していない」となり、最後は「首脳部の指示でした。申しわけありません」と全てが「偽」で固められ、テレビや新聞に幹部が揃って頭を下げる姿を飽きるほど見たものです。これでもかこれでもかと同じような光景を見せられると、見る方も、見られる方もなれ合いになり、頭を下げる尊厳さがだんだん薄れ、我ながら恥ずかしい思いです。それにしても今日、このような日本になるとは誰も想像しなかったに違いありません。万事が一部の人達の都合で行われていることに原因があると思います。
新生児室なる部屋が各病院にあります。新生児室はいろいろな病気をもった生後30日までの赤ちゃんを一カ所に収容し、便利に、効率よく管理するために設けられた部屋で、重症な患者を収容する集中治療室と同じような機能をもった特殊の部屋です。しかし、現存の新生児室は健康な赤ちゃんまでも収容しています。勿論、感染などの問題で、病気を持った赤ちゃんと健康な赤ちゃんを同じ部屋に収容することはありません。
問題は健康な赤ちゃんの新生児室です。健康ですから一室に収容する必要はありませんが、それぞれの赤ちゃんを各部屋においたのでは、ミルクを与えたり、産湯を浴びせたりすることがスタッフにとって不便だからであります。要するに、赤ちゃんの立場より管理する医療人の立場を優先したもので、「偽」とは申しませんが、一部の人達の都合で設けられていることには間違いありません。アメリカのように産後2日目に退院するのであれば赤ちゃんを母親から離す期間はたかだか1日でありますので、問題になりませんが、日本のように6日から10日間も入院している場合では少なくとも1週間は母親と赤ちゃんが離ればなれとなり、赤ちゃんや母親に良い影響を及ぼしているとは申せません。生まれた直後より強制的に離れさせられて良い結果を期待することは難しいのではないでしょうか。赤ちゃんの口唇が乳首とその周囲の乳輪を吸うことで、女性ホルモンの分泌が高まり、ますます赤ちゃんへの愛情がほとばしってくると言われています。このような一時的に離れた環境が母親の母乳の分泌を低下させ、やがて、母乳不足となり、ミルクなどの乳製品に頼るようになります。母乳が他の人工乳性品より優れていることは明らかです。
昨年は「品格」という言葉がはやりました。このまま突き進んだら、日本人はますます劣化し続けるであろうことに一つの警鐘を与えたと思われますが甚だ情けない気がします。
日本人のこの様な劣化現象が赤ちゃんを新生児室に収容する事に深く関係するとは申しません。しかし、何事も便利主義で対応しようとすることが、ひずみを起こしていることには間違いなさそうです。
科学が進歩し、全てにエビデンスがないと信用されなくなり、「罰が当たる」というような漠然とした観念的なエビデンスがない言葉は相手にされなくなり、むしろ軽んじられるようになってきました。
キリスト教の背景のある国々では、人が見ていなくても、おてんと様、神様が見ているから、してはいけないという意識があると聞き及んでいます。誰かが見ているという意識が備われてくれば、日本人の劣化現象も少しは改善されるのではないでしょう。




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