Kensuke Esato,M.D.
江里 健輔
 
江里 健輔
山口大学名誉教授
山口県立大学学長・理事長
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癒やしのそよ風(ほうふ日報)

アメリカの医療 NEW
2008年03月25日

アメリカの医療は日本より良いか?
       

アメリカの医療が日本より優れているとしばしば報道されるので、「早くアメリカ並みの医療を受けたいですね」と言う声を聞きます。
本当にそうなのでしょうか?

1991年ごろ、アメリカシアトルにある州立ワシントン大学の心臓外科を訪問したことがありました。当時、心臓の手術が毎日7〜8例あり、月に約30例余り行われていました。これに比べ、山口大学付属病院では年に60余例しか行っていませんでしたので、羨ましく思いながら見学したものです。ところが、8年後に再び訪れたところ、心臓手術が月に15例ばかりしか行われていませんでした。前回の訪問時にくらべ、心臓手術件数が半減していたのです。心臓外科のスタッフが代わったわけでもなく、手術成績が悪くなったわけでもありません。この理由を心臓外科の担当教授に尋ねたら
「保険会社のせいだよ。シアトルのダウン・タウンに保険会社肝いりの心臓専門病院が設立され、会社がそちらの病院で手術を受けることを患者さんに勧めるので、年々手術が減ったのですよ。あちらさんの方が手術料が安いので、保険会社としては我々のような大学で患者さんが手術を受けるよりはるかに経費節減となり、経営面で都合が良いというわけです。だからと言って、我々の病院は州立大学ですから、手術料を下げるわけにもいかず、まったくお手あげですよ」
と、大きなジェスチャーを交え話してくれました。国民皆保険の日本ではとても考えられないことです。手術成績が同じであれば、医療費の安い方が良いのは当然ですが、高額医療機材がこれほど発達した現在、安い医療費で良い成績を上げることは大変難しいことです。日本の健康保険加入率は100%ですが、アメリカは約60%です。これは日本の医療では命が個人の経済力に大きく左右されていないことを示すもので、アメリカよりはるかに優れた医療制度と言えます。

それでは、われわれ日本人は医療軸をどこにおけば良いのでしょうか?

日本の皆保険制度は誰でも、何処でも同じ質の医療を受けることが保障されていますので、国民に適した本当に良い医療制度です。アメリカのように営利を目的とする保険会社が医療をコントロールすれば、品位ある医療は崩壊するでしょう。
学会でこんな笑い話がまことしやかに討議されたことがあります。
「何故、貴方の施設ではこのよう腸管吻合不全(縫った腸と腸が破れ、腸内容が腹の中に漏れる合併症)が多いのですか?」
「我々の病院は個人会社経営の附属病院です。営利を目的にしていますので、安い縫合糸を使用することを病院長が要求するものですから、他の施設より少し縫合不全が多いのは当然かもしれません」
腸を縫う糸にもいろいろあり、値段も違います。良い糸は1本3000円と高価です。しかし、これを國が定めた以上使うと、保険が面倒みてくれませんので、病院の負担となり経営が成り立たず、結局安い縫合糸を使うことになるのです。。
自分が手術を受ける時には良い糸を使って欲しいと思うのですが・・・




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