Kensuke Esato,M.D.
江里 健輔
 
江里 健輔
山口大学名誉教授
山口県立大学学長・理事長
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癒やしのそよ風(ほうふ日報)

未病のうちに NEW
2008年06月25日

未病のうちに
                  
山口県立大学理事長(学長)
                           江里 健輔


「未病」という言葉を知っていますか?
これは検査値に異常があるけれど、症状はまったくない状態をいいます。毎日、鏡台から自分の姿をながめ、
「歳をとったなあー」
と嘆かれていると思います。私もそのうちの一人ですが、歳を重ねるにつれて、体がだんだん細く、小さくなり、顔などにしわが増えてくるのは当然で、その原因は血液循環が悪くなったためであり、止めるわけにはまいりません。しかし、すこしぐらい遅らせることは不可能ではありません。その証拠に同じ年齢でも若く見える人もいれば、老けて見える人もあります。人それぞれです。これは未病の時に体をどのようにいたわっているかに関係します。
心臓、腎臓、肺臓など重要臓器の機能は加齢により次第に低下し、20歳を100%とすれば、60歳で60%に低下するとされています(Shock NVV System integratio,1977)。
ではどうすれば進行を遅らせることが出来るのでしょうか?
疾病の発生要因とその割合は生活習慣50%,遺伝要因20%,外部環境要因20%,医療10%とされています(池田義雄、日本医事新報、No5899)。生活習慣では食生活、運動、喫煙、飲酒、過労、ストレスなど日常生活のあらゆるものが要因となり、いずれも過度にならないようにすることが重要です。
運動がもたらす効果について考えてみましょう。
運動には有酸素運動と無酸素運動があります。前者は自然呼吸で出来る運動で、後者は自然呼吸で運動することは不可能で、酸素などを必要とし、体に害こそあれ、まったく益のない運動です。野球選手や力士の平均寿命が短いのは無酸素運動のような過激な運動を長年するためです。体に適したもっとも良い運動は165から年齢を引いた脈拍数になる程度とされています。これはちょうどジョッキング、少し早めの歩行など額に汗がにじむぐらいのものです。運動すると脈拍数が増え、体が温かくなります。これは心臓機能が高まり、末梢血管が拡張し、血液循環が増えるためであります。加齢のため手足に血液の流れが悪くなっている状態が一時的にせよ改善されるので、体には極めて良い効果をもたらすことになります。また、運動で脳内エンドルフインが多量分泌されますので、気分も爽快になりストレス解消に役立ちます。一日に5000歩ぐらい歩くことが推奨されています。
私は数年前、コレステロールが280mg/dl,空腹時血糖値が7.9mg/deでありました。驚いて、このままでは心筋梗塞、糖尿病などの生活習慣病で倒れてしまう、と思い、動物性蛋白を控え、野菜を中心とした食生活に変え、毎日1時間、歩数にして7000歩歩くことにしました。コレステロールや血糖値はみるみるうちに低下し、今ではコレステロール200mg/dl,空腹時血糖値130mg/dl,HbA1c 5.8mg/dlになっています。あの時、担当医は私に薬を飲むことを勧めましたが、家系に糖尿病や高脂血症はありませんから、不規則な生活習慣が原因と判断し、3ヶ月間生活習慣を変え、これらの値が下がる努力をしたいと申し出たことが良かったと今でも胸をなでおろしています。いったん、薬を飲み出すとずっと薬を飲まなくてはならなくなります。それでなくても飲まなくてはならない薬は年々増えてきます。安易に薬に飛びつくものではありません。薬を12種類も服用し、悶々とされていた患者さんが私の外来に来られ、半分に減らすよう勧めたところ、非常に元気になられた患者さんが多くおられます。
病気になれば、薬を飲まなくてはなりません。しかし、検査値だけが異常な未病の時には、その原因を取り除くように努めれば、病気にならずに済む場合が沢山あることを知り、規則正しい生活をされることをお勧めします。



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