Kensuke Esato,M.D.
江里 健輔
 
江里 健輔
山口大学名誉教授
山口県立大学学長・理事長
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癒やしのそよ風(ほうふ日報)

日本は医療に沢山金を使っているか NEW
2008年07月27日

          日本は医療に沢山お金を使っているか?
                    山口県立大学理事長(学長)
                             江里 健輔


日本では高齢化が急速に進み、名実共に高令社会になりました。例えば、65歳以上の高齢者が全人口に占める割合が7%から14%になるのに要した年数はフランス125年、スウエーデン85年、アメリカ70年であったのに対し、日本はわずか25年であったと報告されています。この急速な変化に環境整備が追いつかなくて、いろいろな問題が生じています。なかでも深刻な問題が医療です。加齢にともないどうしても医療の世話になる人が増えますので、国民医療費が増えてきます。政府は将来を見越して、医療費抑制に躍起となっています。厚生労働省2004年の報告では入院の割合を74歳以下を1としますと、75歳以上ではその2.3倍であり、1人あたり年間医療費は前者が63万円であるのに対し、後者は81万円にだったそうです。2018年には75歳以上の割合が65〜74歳の割合を超えると予想されていますので、医療費の高騰は避けられないでしょう。
それでは、日本は他の国にくらべ医療に沢山のお金を使っているのでしょうか?
日本医師会のグランドデザイン2007によりますと、日本の総収入に相当する国内総生産(GDP)に対する総医療費支出(医療費、介護費、予防・公衆衛生費など)は1995年6.8%,2003年8.0%に過ぎません。これは世界有力な30ヶ国が加入している経済協力開発機構(OECD)の中ではそれぞれ23位、18位でいずれも平均以下です。主要5ヶ国(日本、アメリカ、ドイツ、フランス、イギリス)の中ではその下位をイギリスと競っている状態です。また、2003年の一人あたりGDPはOECD加盟国の平均以上であるのに対し、総医療費は平均以下です。
イギリスでは年々高騰する医療費を抑制するために、サッチャー・メジャー保守政権はこれまでの中央集権的医療運営を市場優先競争型に変えました。その結果、ガン患者でも3ヶ月以上待たなければ手術を受けることが出来ないとか、医師をはじめ医療従事者希望者が少なくなり、極端な医師不足と志気低下を招き、医療危機となりました。1997年に誕生したブレア政権は医療費を急遽1.5倍に増やし、市場優先を廃したところ、医療従事者も増え、国民が納得する医療を提供出来るようになりました。
日本は今やサッッチャー・ブレア政権時代の医療政策が行われようとされています。しかし、今の日本は世界先進国の中ではもっとも医療にお金を使っていません。将来に備えて医療費を抑制しなければならないことは判りますが、まずは先進国なみに医療にお金をつぎ込むべきです。医療費抑制策はそれからでも遅くないでしょう。
国民が温かい医療を受けるには自己負担をどんどん増やすのではなく、誰もが、何時でも、何処でも同じ医療が受けられる今の制度を保証した上で、いろいろな施策を行って欲しいもの



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