Kensuke Esato,M.D.
江里 健輔
 
江里 健輔
山口大学名誉教授
山口県立大学学長・理事長
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その他

人の臓器機能は必ず低下する NEW
2008年11月30日

人の臓器機能は必ず低下する
               山口県立大学理事長(学長)
                       江里 健輔

私は医療相談をメールで受けています。毎週いろいろな健康相談が飛び込んできますが、今回はその一部を紹介しましょう。
「私は最近糖尿病と診断され、食事療法と運動療法を行い、血糖値降下剤も同時に服用しています。医者からは生涯これを続けていかなければならないと言われています。私は現在69歳で、まだ生きたいし、美味しい物も食べたいと思います。このままこの状態を続けることは到底耐えられません。そこでインターネットに出ているサプリメントで何か有効な物はないか調べました。効果がありそうな商品を見つけました。糖尿病の原因がクロムの不足にあるとする「○○○理論」をタリスクロイト博士(仮称)が発見したそうですが、この理論を商品化したサプリメントがあるのでしょうか?この理論は本当に認められているのでしょうか?必死になって抜け出したいと願っているのですが、他に有効なサプリメントがあれば教えて戴きたく伏してお願い申しあげます(現代医学ではサプリメントは否定されている事は知っていますが)」
このような質問に対し、私の回答は以下の通りです。
「メール有り難うございます。情報が限られていますので、満足される回答になっていないかもしれませんがご了承下さい。結論から申しあげますと貴台の申されるサプリメントにはエビデンスがありませんので、効果についてうんぬん出来ません。しかし、多くのサプリメントにはエビデンスがありませんので、医学的には効果があるとは申せません。ところで、貴台の糖尿病は運動、食事療法、血糖降下剤でコントロールされていますので、これを続けられたら良いと思います。年令を重ねると各種臓器の機能が低下します。例えば、30歳の時を100とすれば、心臓の大きさを示す心係数は70%に、肺活量は58%,最大呼吸容量45%に低下します。そのために、ちょっと坂を登っても息が切れる、すぐ疲れるという症状が出るのです。検査しても異常がないのに、しびれ、意識障害、関節痛などいろいろな症状が現れます。これを老年症候群といい、症状を軽減することは出来ますが、治すことは出来ません。糖尿病も加齢に伴う病気のひとつですから、それはそれとして受けとめることが大切です。糖尿病の合併症である白内障による視力消失、腎機能低下による人工透析、血行障害による下肢切断などの苦しみに比較すれば、運動や食事療法は楽なものです。どうか、糖尿病による苦しみをしっかりと受けとめて、前向きに頑張られることを期待しています」
でした。
数日後に返事がまいりました
「親切丁寧なご回答を頂き厚く御礼申しあげます。現実は厳しく恐れていた内容であった為、へこんだ気持です。しかし、全面的に諦めきれず何か解決の道はないかと探すために本屋巡りをしています。そうしたら、運動を少なくする薬があると書いてある本を見つけました。将来に向けて少しでも希望を持ちたいと思っています」
このようなメールに接し、この人の執念(いささか間違っていますが)に完敗すると同時に、あらゆる生物は時と共にその機能を失い、いずれは滅んでいくものであると認識したくない「人間の業(ごう)」に哀れみを覚えるのも事実です。




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