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淋しいTY番組 |
淋しいTV番組 山口県立大学理事長(学長) 江里 健輔
カロリーを消費する以上に食べ物を取ると、カロリーが余って脂肪として体に蓄積されるために益々太ってきます。その理由は脂肪の代謝産物である遊離脂肪酸が沢山放出され、肝臓に入り、脂肪合成が盛んになり、コレステロールが体内に増えてきます。その上、遊離脂肪酸がインスリンの効果を低下させますので、血糖値も高くなります。女性の場合には脂肪細胞から分泌されるアデイポネクチンが低下しますので、乳ガン発生の危険因子ともなります。このように太ることはお相撲さんなら必要でしょうが、普通人にとって、百害あって一利なしです。 ある女性のお笑いタレントが「1週間で10キロ太る」契約にサインして、一途に太る努力をしている姿を放映していることをたまたまテレビ予告番組で知りました。契約によると、10キロ増加しなかった場合、その間に食べた食費は全額本人負担となるそうで、本人は夜、昼関係なく、焼き肉、ステーキなど体重が増えるのに効果的な食物を涙を流し、苦痛を覚えながら食べまくる姿をカメラが追うとありました。勿論、厳重なメデイカルチェックを受け、健康面には配慮されるとのことですが、スタート前の体重が79キロですので、目標の89キロ達成には1日1万2000キロカロリー取らなければならない計算になるそうです。50キロの体重を60キロにするのであれば、それほど難しいことではないかもしれませんが、スタート時点で79キロあるわけですから、厳しい挑戦だと思われます。放映を見ていませんので、結果は知りませんが、とても、華やかな色彩を感じることは出来ず、悲しい、淋しい話しです。 この女性タレントがどのような才能、才知の持ち主が知りませんが、テレビに出たい、芸能界に生き残りたいだけのために体を犠牲にして闘っている姿に、憐れみを感じ、同情こそすれ、非難する気持になれません。単に、若い女性にグルメ好みのリッチな食事を与え、体重増加に挑戦させるだけの無配慮で、知性が感じられない番組です。いくらメデイカルチェックがなされるとはいえ、制作し、放映することにどのような価値を認め制作しているのであろうかと問うてみたくなります。冒頭で述べたように、太る弊害が10年後、20年後の彼女の健康にまったく影響ないと保障することが出来るのでしょうか? 視聴率向上のためなら、手段を選ばない経済至上主義が赤裸々で、国民の一人として恥ずかしくなるだけです。
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