Kensuke Esato,M.D.
江里 健輔
 
江里 健輔
山口大学名誉教授
山口県立大学学長・理事長
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癒やしのそよ風(ほうふ日報)

長生き出来ない NEW
2009年02月20日

長生き出来ない
タバコを吸う人と一緒では
               山口県立大学理事長(学長)
                      江里 健輔

受動喫煙が問題になっています。タバコを吸う人はあまり深く吸いませんので、ニコチンは肺の奥まで達しませんが、喫煙者の口から出された煙を吸う受動喫煙者はニコチンがうすいので、深く吸い込んでいます。従って、受動喫煙者には末梢部肺ガンが多く、喫煙者本人には中枢部肺ガンが多いとされています。このことは前者には予後、すなわち、病気の自然経過の悪い腺ガンが、後者には比較的予後の良い扁平上皮ガンが発生することになります。喫煙者が肺ガンに罹るのは自業自得ですが、そばで一緒に生活し、タバコを吸わないのに、肺ガンに罹ってしまうことはいくら愛する主人(妻)が原因とはいえ、我慢出来ることではありません。これまでも、受動喫煙が肺ガンや心筋梗塞などの心臓疾患の発症を高めることは広く認められていましたが、脳卒中との関係はあまり研究されていませんでしたので、注目を浴びていませんでした。ところが、最近、喫煙者を配偶者とする人に脳卒中に罹る割合が高いという研究がハーバード大学公衆衛生学部のグリモール博士らによって発表されました(A.J.Preventive Medicine2008:35;245-248)。
彼らは1992年、93年、98年、2004年に全米の50歳以上の成人とその配偶者1万6,225人を対象に初回脳卒中を発症した頻度を平均9.1年間にわたり追跡しました。その結果、
タバコを吸ったことのない人が脳卒中に罹る割合はタバコを吸っている配偶者と一緒の場合には、吸っていない配偶者と一緒の人より42%高かった、ということでした。
自分がタバコを吸っていなくても、配偶者が吸っていれば、脳卒中に罹りやすくなるということを科学的に証明した研究であります。グリモール博士らは「これらの知見は、配偶者が喫煙することにより、非喫煙者の脳卒中発生頻度が高まることを示している。禁煙による健康上の利点は、喫煙者自身にとどまらず、場合によっては配偶者にも波及するものと考えられる」と述べています(メデイカルトリビューン平成20年11月6日より)。
欧米などではタバコが病気発症の大きな原因と考えられる場合、患者さんがタバコを止めないかぎり、治療を開始しないとされています。確かに、病気の発生を予防するためにいくら血液をさらさらにする薬を飲んでいても、タバコを吸っていては、薬を飲む意味がありません。喫煙者このような毅然とした態度を患者に求める欧米にくらべ、我が国はプライバシーということで、「タバコを吸うのを止めたらどうですか」と言うのが精一杯です。しかし、今回のようなデータが示されると「タバコを止められるまで結婚しませんよ」とか「タバコを止められないなら、離婚しましょう」いう強気の姿勢が男性のも、女性にも必要かもしれません。言い過ぎでしょうか?




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