Kensuke Esato,M.D.
江里 健輔
 
江里 健輔
山口大学名誉教授
山口県立大学学長・理事長
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その他

別れる練習 NEW
2009年02月25日



別れる練習
              山口県立大学理事長(学長)
                       江里 健輔
時々、家内に
「ぼつぼつ生き別れの練習をしようか?お互い古希になったので、何時、突然死に別れが来るかもしれないから」
家内は
「どうぞ、それが貴方の希望ならば何時でもOKですよ」
簡単に笑って賛成してくれました。
しばしば、言われることがあります。奥さんに先立たれると、主人はみるみるうちに気力も体力も衰えて、数年の内に奥さんの後追いをするが、奥さんの方は主人が死んでしばらくは奈落のどん底を彷徨っていますが、やがて、元気を取り戻して、以前にも増して人生を楽しく、愉快に満喫される、ということです。確かに、仕事一本で過ごしてきた主人は家に何があろうが、それがどこにしまってあろうがまったく分かりません。突然、奥さんに先立たれたら、どの方向にオアシスがあるかも判らず、乾ききった砂漠の中に放り出されたようなものです。このようにならないためにも、生き別れの練習をしておいた方が良いだろうということです。
平成18年の内閣府が行った65歳以上の独居老人の事態調査で、男性のうち「近所付き合いがない」とした人は1500人24.3%であり、女性の7.1%の3倍であったと報告されています。独居男性老人が特に孤立している実態が浮かび上がってきました。孤独を楽しんでいるのであれば問題ありませんが、心配事を抱えて、しかも相談相手がいないと嘆いている人が16.9%もあるという事です。
では、どのような練習をしておけば良いのでしょうか?
@「かかりつけ医」を持つこと。何時でも往診して貰え、冗談が言え、遠慮の要らない医師が望ましいのです。日中なら対応してくれるが、夜間の対応を渋る「かかりつけ医」は好ましくありません。
A防犯には念には念をいれて対策を講じておくこと。例えば、貴重品は貸金庫に入れ、突然のセールスには対応しない。寝室には何時も身を守る器具を用意しておくことです。
B入院に対応出来る程度の現金は手元においておくこと。阪神淡路大震災のとき、貯金はすぐ現金化できなくて、現金がもっとも役だったと言われています。
C何時でも、何処でも連絡出来るように携帯電話を身につけておく。携帯電話に連絡先を入力しておくとさらに便利です。庭仕事の最中、突然の頭痛で動けなくなり、5メートル先に電話があるが、それにも手が届かず、手遅れになった脳出血の患者さんが病院に搬送されることがしばしばありました。
D何時でも入院出来るように身支度の準備をしておくこと。寝具は病院に備えてありますが、日常品は自分で用意しなければなりません。タオル、洗面道具、食事セット、パジャマ、スリッパをはじめ肌に付けるもの、保険証などを一カ所にまとめ、第三者が直ぐに判るようにしておくことです。
E近くに遠慮のいらない友人を持つことです。とっさの時に役立つのはお互いの気ごころがしれた隣人です。
F家事を家内と一緒にすること。「男性、厨房に入ることまかりならぬ」、これは明治時代の産物で、現在は積極的に共同作業することが大切です。
別れる練習とは離婚することではなく、何時不慮の状況になろうとも、うろたえず、あわてず、冷静に対処できる心構えを身につけておくことです。




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