Kensuke Esato,M.D.
江里 健輔
 
江里 健輔
山口大学名誉教授
山口県立大学学長・理事長
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癒やしのそよ風(ほうふ日報)

返還すれば済むのですか NEW
2009年03月22日


返還すればすむ問題ですか?
       
山口県立大学理事長(学長)
               江里 健輔


「先生、どうしましょうか?ある団体から寄付の願いがきていますが。なんかうさんくさい団体のようですが」
「どんな団体なのかわからないの?」
「調べてみましたが、完全に怪しい団体ではなさそうです」
「それなら、寄付を受け取っておいたらどうだね。そのうち、おかしな団体であることが判れば、その時、返却すればいいだろう」
「それもそうですが・・・・」
ということで、その団体を詳細に調査することもせず、その寄付金を受け取ったそうです。
このような会話を聴いて、どこかにあるような話しと思われませんか?そうです。政治資金でしばしば新聞報道される話しです。
ある政党の代表の公設秘書が逮捕されたのをきっかけに、その団体から寄付を受けた別の政治家が寄付金を返却するつもりであるという報道がされました。よくよく考えると、この話しは本当に変な話しと思われませんか?政党代表の秘書が逮捕されなかったら、寄付金を返却することもなく、そのまま静かに受け取っても、問題にならなかったことになります。
ある会社員が会社の集金をして回っている時、タバコ銭がなかったので、集金したお金を拝借して、タバコを買い、会社に戻って、借用したお金は明日返却しますと上司に報告したところ、ひどい剣幕で怒られてそうです。その会社員は一時的に拝借して、直ぐ返却するのに、何故悪いのですか反発したところ、その上司は
「一時的にせよ、公金を使用したことに変わりはない。例え、数分間でも公金を横領したと同じことだ」
と説明し、この会社員は自分のした行為を理解し、とても恥じたということです。
政治家の寄付金でもこれと同じように、正当なお金であるという証拠もなく、受け取り、後で返却したので、何ら、罪はないと考えるのは許されないことであります。そこには社会人としてのあるべき姿が崩れているとしか思わざるを得ません。
いろいろなお礼のつもりで、お金を使うことは本来ならば自分の命を貴方に差し上げたいくらい感謝していますが、命をあげるわけにはまいりませんので、お金を差し上げます。それで、私の気持を理解して下さい、ということです。価値観の多様性ということで、正しいお金の使い方が熟慮されることなく、間違った使いかたに傾いてきています。これは、かっての医療費負担ゼロ、100円ショップ、さらには、中国の貯蓄率が40%であるのに対し、日本は25%であるという事実などから判るように、日本人のお金に対する価値感を変え、困ったら当局がどうかしてくれるという安易な考えが横行してきたためと思えます。
最近、自分のお金には熱い気持ちを傾けるくせに、公金への思いが希薄になってきたと言われています。そのことが税金の無駄使いということになります。お金は命をかけて使うものであるという強い意識があれば、お金を与える側と貰う側の真の意味が理解され、その行為も慎重になると思うのですが・・・
お金を使う意味を真摯に考えるべきでしょう。



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