Kensuke Esato,M.D.
江里 健輔
 
江里 健輔
山口大学名誉教授
山口県立大学学長・理事長
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その他

心のこもった対応とは NEW
2009年03月25日

心のこもった対応とは?
              山口県立大学理事長(学長)
          江里 健輔

私がある総合病院を受診した時のことです。
歳のころ30歳前後の受付の女性
「何科を受診されるのですか?」
「歯科ですが・・・」
「この用紙に必要事項を書いてください」
言われるままにその用紙に記入。
「これでいいでしょうか?」
「これでいいですね。保険証を一緒に出してください」
受付女性は私の保険証と記入した用紙を自分の机まで持って行き、コンピューターの前に座り、キイーを打ち始めました。しばらくして
「この書類だけでは受診できませんよ」
「何故ですか?」
「江里さまはこの1月10日で70歳になられました。従って、高齢受給者証が必要です。持参されていませんか?」
「高齢受給者証って、何ですか?」
「江里さまは公立学校共済組合員ですので、山口支部から送られている筈ですが・・・」
「そんな受給者証はまだ受け取っていませんが・・・」
「それならば、今日は自費扱いになります。今日は自費で受診され、次回に高齢受給者証を持参されれば、払い戻しされますので。そうして下さい」
相手の気持ちなぞ関係なく、冷たい事務的な対応です。生憎、十分なお金を持ち合わせていなかったので、自費で受診する気持になりません。お金がないとも言えず、受診することを諦めました。私の勤務地が山口市ですので、明日でも受診できます。しかし、遠方から来られた患者さんにとっては面倒なことです。病院を後にして、早速、この顛末を山口支部に連絡したところ
「事務が滞って、まだ、高齢受給者証を発送していません。従って、江里さんの場合は3割負担と事務に申し出てください。それで受診出来るはずです」
という答えでありました。
この受付女性は外来受付専門だから、高齢受給者証が何故必要なのか、また、持参していない患者さんへの対応を当然知っている筈です。しかし、山口支部へ電話してあげましょうという一歩、踏み込んだ優しい、相手の気持を汲んだ対応をされませんでした。それどころか、自費で受診しても、後日払い戻しされるので、損をしないので、何故、受診をためらうのかと不思議がっていました。
教員の世界には凡庸な教員はただ喋るだけ、よい教員は説明を加える、優れた教員はさらに自分でやって見せる、偉大な教員は心に火をつけると言われています。受付女性は高齢受給者証の必要性(所得により負担金が異なるため)を説明もしなければ、自分から解決してあげようという気持もない、単なる凡庸な受付係で、中学生でも出来るような対応に過ぎませんでした。受付女性が山口支部に電話し、保険証だけでも、受診出来るようになれば、この受付女性の対応に「感謝」という火が私の心についたことでしょう。どのような職場であれ、まず訪れるところは受付です。その対応次第では、後に続く行動が楽しいものになるか、悲しいものになるかの分岐点になります。病院のように体も心も病んだ人が訪れる職場では受付係りには格別に心のこもった配慮が求められていることを知るべきです。


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