Kensuke Esato,M.D.
江里 健輔
 
江里 健輔
山口大学名誉教授
山口県立大学学長・理事長
執筆情報 [詳細ページ]
癒やしのそよ風(ほうふ日報)

患者学2 NEW
2009年05月29日

患者学A:健康寿命
       山口県立大学理事長(学長)
            江里 健輔

加齢とともに血管が硬くなり、血液の流れと接する内面は丁度汚い川底のように凸凹となります、すなわち、動脈硬化です。内面が凸凹になりますと、血液の流れがスムースでなくなりますので、血液がひっかかり、血液の塊が出来ます。これが血管の内面にじっとして動かない状態であれば何ら問題ないのですが、急に血圧が高くなったりして、血管の内面からはずれると、それが脳に達すれば脳梗塞、心臓に達すれば心筋梗塞、腹に達すれば腸管膜動脈血栓症、足に達すれば閉塞性動脈硬化症を来し、いずれも致命的になることがあります。
それではどうすれば予防出来るのでしょうか?
いろいろな予防法がありますが、誰にもすぐ出来て、最適の方法は運動です。運動すれば,脂肪が燃やされますので、中性脂肪値が低下しますので、脳梗塞、心筋梗塞を発症する危険性が低くなります。しかし、無計画に運動すれば良い結果が出るというものでもありません。運動には有酸素運動と無酸素運動があります。前者は自然呼吸で出来る運動、後者は過呼吸しなくては出来ないような激しい運動です。通常は有酸素運動である歩行であれば、1日約60分間かそれ以上が有効とされています。20分以内の歩行では脂肪が燃えませんので、意味がないとされています。
この様に話しますと、多くの人はこの忙しいのに、毎日60分間も歩行する時間などありません、という返事が返ってきます。以前は一定時間続けて運動しないと効果が薄いとされていましたが、1回3分間ほどの「細切れ運動」でも効果あるという研究結果が報告されています(宮下政司:朝日新聞、2,6'09)。これによると、ある速歩を30分続けた場合と1回3分を細切れに10回した場合ではどちらの運動でも翌日の中性脂肪値は同じで、ほぼ同じように抑えられたとのことです。このような細切れの運動であれば、通勤の時、昼休み時間などを活用すれば、それほど難しいことではないでしょう。要は貴方にその気持があるかどうかです。
「健康寿命」という言葉がよく使われます。これは寝たきりや認知症などにならずに、健康で自立した生活が出来る期間を示す言葉です。 WHO(世界保健機関)の2005年の報告によれば、日本女性の平均寿命が85.6歳で、健康寿命は77.7歳、男性のそれは78.6歳、72.3歳で、平均寿命と健康寿命の差は女性が7.9歳、男性が6.3歳だそうです。ですから、この期間は寝たきりや認知症など病気の状態であるということです。人間の「生」には二つの面があります。即ち、「生きている」という静の場面と「生きて行く」という動の場面です。同じ「生」を受けているのであれば、「生きて行く」のでなければ、少し言い過ぎかもしれませんが、生きる意味がないように思います。健康寿命を延ばす、それには貴方にもすぐ実行出来る歩行などの有酸素運動が第一番です。




[ もどる ] [ HOME ]