Kensuke Esato,M.D.
江里 健輔
 
江里 健輔
山口大学名誉教授
山口県立大学学長・理事長
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風のとき(宇部日報)

病院不要論 NEW
2009年06月15日

病院不要論
               山口県立大学理事長(学長)
                       江里 健輔
このタイトルで多くの方はとんでもない、と言われるでしょう。当然のことですが、合併した多くの市は、合併により二つあるいは三つの病院を抱え込むことになり、市の財政を益々緊迫させています。

本当に病院が必要なのでしょうか?

私の本意は人口3〜5万人の街には300ベット数を持つ病院は設立母体に関係なく、二つも要らない、一つで充分だということです。

「社会的入院」という言葉を知っておられますか?

入院は本来、医学的管理を必要とするために医療機関に留め置く措置であります。病状が回復して、医学的管理が必要なければ退院すべきであるにも関わらず、患者や家族の生活上の都合で介護の代替策として行われている入院のことをいいます。当局は年間医療費が30兆円を超え、このままでは医療費が日本経済をやがて圧迫すると予想されるために、社会的入院を抑えることで、医療費を軽減しようとしています。医療費軽減は必要なことですが、問題は社会的入院されている方々の多くが一人暮らしであったり、老夫婦だけの生活で、在宅居住が困難であるにも関わらず、受け入れ体制が不十分なまま、この施策がどんどん進められることです。今、必要なことはこれらの方々を安価で、心配なく、安らかに過ごせる公共施設を設立することです。治療を必要としない、症状固定した人が一般病院に入院されては治療を必要とする患者さんが入院することが出来ません。だからと言って、行き先のない患者さんを無理矢理退院して貰うことも出来ません。しかし、今はどこの養護施設やケアハウスも一杯でなかなか入所出来ないのが実情です。一つの市にはベット数300を持つ一般病床病院は一つで充分で、他の一つは症状固定した患者さんを収容する施設に転換することです。医師不足、先進的医療に必要とされる高価な医療器具の充実などを考えると、一つにした方がより効率的で、さらに、高度な医療を患者さんに提供出来る病院となります。例えば、それぞれの病院に外科医が3人づつ常勤しているとすれば、一つにすることで常勤外科医が6人となり、外科領域のすべての疾患に対応できますし、それぞれの病院が一つずつ所有していた高度医療器械であるCTが一つの病院に二つあるいは三つとなり、迅速に対応出来るようになります。病院が一つになれば、病院が遠くになるため、不安となることは判りますが、外来部門だけの診療所を設け、病院への交通網を密に確保すれば、不安は解消するでしょう。医療の質と品格が不十分な二つの病院より、充分で、満足できる一つの病院を設けることが市民にとって如何に利便性が高いかは火をみるより明らかです
いまこそ、病院の在り方が問われている時代はないでしょう。関係者は10年先、20年先を見越した医療環境を作って欲しいものです。




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