Kensuke Esato,M.D.
江里 健輔
 
江里 健輔
山口大学名誉教授
山口県立大学学長・理事長
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風のとき(宇部日報)

腹七分目で、順風満帆 NEW
2009年08月03日

             腹七分目で、順風満帆
                     山口県立大学理事長(学長)
                           江里 健輔

米ウイスコンシン大チームから「腹七分目なら長寿」という研究結果が報告されました(読売新聞2009,7,14付き)。それによりますと、80年以降、計68匹のアカゲザルを用いて、好きなだけエサを食べさせたグループ(34匹)、摂取カロリーをそれより3割減らしたグループ(34匹)に分けて20年間飼育しました。20年間生存したサルはカロリー制限したグループでは20匹、好きなだけ食べさせたグループでは13匹であったそうです。興味あることは,死んだサルを解剖したところいずれも糖尿病、ガン、心血管疾患、脳の萎縮など加齢性の病気だったそうです。彼らはこのメカニズムは不明だが、カロリー制限で、糖代謝機能が改善され、加齢病気の発生を抑制し、老化を遅らすことが出来たのではないかと推測しています。山崎正利氏は彼の著書「サイトカインの秘密」(PHP出版、1999)の中で、細胞は日々変異して悪い細胞ができ、やがて自然に死んでいくが、カロリー摂取すると、例えば、腹八分目で、悪い細胞がどんどん死んでいくので、ガンになりにくくなると説明しています。確かに、脂肪のとり過ぎは前立腺がん、乳がん、大腸がんになりやすいということが証明されていますので、山崎正利氏の主張は当を得ていると思います。これまで摂取カロリー制限でマウスなどの老化や発ガンを防ぐことが出来ることは証明されていましたが、霊長類ではよくわかっていませんでした。その意味でこの研究は画期的であります。
「腹八分」は貝原益軒の言葉と思われていますが、その養生訓には「珍美の食に対するとも、八九分にてやむべし。十分飽き満つるは後の禍なり」と述べ、ハッキリ「腹八分」とは述べていません。
それでは「腹八分目」とはどの程度の摂取カロリー量でしょうか?
個人個人で、量は異なりましょうが、だいたい「もう少し欲しいなあ」と思う時が「腹八分」の時でしょう。

このような事は、日常生活でも言えることで、「腹八分目」ならぬ、「口八分目」が大切であると言うことでしょう。
「言いたいこと、腹八分目、夫婦円満」
という川柳があります。正しいことを時や場所を振りかまわず居丈高に発言される人がおられますが、その主張が正しいだけに、反対することもできず、ごもっともと平身低頭するしかありません。「正しい事は小さな声で」と云われていますが、「口八分目」のごとく、相手に逃げ場を作りながら喋らないと人間関係はスムーズに運びません。
「人の命は我にあり、天にあらず」は老子の言葉ですが、「腹八分目」、「口八分目」で生活することで、体も心も順風萬帆ということになるのではないでしょうか?




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