Kensuke Esato,M.D.
江里 健輔
 
江里 健輔
山口大学名誉教授
山口県立大学学長・理事長
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癒やしのそよ風(ほうふ日報)

患者学D:金持ちが長生きするって、本当なの? NEW
2009年08月19日

患者学D:金持ちが長生きするって、本当なの?


豚インフルエンザが世界に波及し、死亡者が出て、スペイン風のように猛威を振るのではないかと危惧されていましたが、死亡者数も予想外に増えず、とりあえず,小康状態になりました。このような不安感を与えたのはこのインフルエンザがメキシコに初発したためで、日本であればこれほど大きな問題には発展しなかったであろうと思っていましたら、「社会経済的弱者で死亡リスク高い」という報告がありました。それによると、英国バーミンガム、パゴナ博士らは1997〜2007年にバーミンガムと北西イングランドの5病院で手術を受けた44,902人(平均年齢65歳)について社会的貧困度と生存率について調べたところ、貧しいほど死亡率が高く、社会的貧困度は、きわめて高い死亡予測因子であり、その上、喫煙、肥満、糖尿病などの発生率も貧困度が高ければ高いほど多かったと報告しています(メデイカル・トリビューン、2009,7,2)。
「健康格差」ということが「経済格差」にちなんで用いられるようになりました。これは人種や民族、社会経済地位により健康状態や受ける医療の質に格差があるということです。日本は単民族で、国民皆保険ですので、「健康格差」は米国や発展途上国のように顕著ではありませんが、皆無ではありません。格差の原因は@病気の発生頻度A医療への受診頻度B医療内容などがあげられていますが、日本では医療内容において格差があります。
最近、マスメデイはしきりに病院をランキングづけしています。このランキングがすべて正しいとは申せませんが、参考になるのは確かです。山口県内の患者さんが東京で受診するのは必ずしも容易ではありません。何故なら、治療費はどこの病院を受診しようが、一定で、差がありませんが、東京へのアクセスに費用がかかります。東京の医療スタッフが山口県に比べて優れているという意味ではありませんが、良質医療は最新医療器械に依存している面がありますので、医療資本の多少が良質な医療提供の基本となります。
それでは、地方医療を大都市レベルに底上げし、「健康格差」をなくするにはどうすべきでしょうか?
その為には数時間で移動出来る地域にセンター病院を設けることです。例えば、山口・防府医療圏には小郡第一病院、山口済生会病院、山口日赤病院、山口県立総合医療センターがあります。それぞれの病院には最新医療機具を備えていますが、質と量において満足出来るものでもなく、すべてに対応出来ません。この圏内では1時間以内で移動出来ます。従って、4つの病院を合併させ、中心となる病院を一つ設け、他の病院は外来対応だけにし、その病院に人、お金を集中的に投じて、完全対応型病院にすれば、大都市大病院に匹敵する病院となり、「健康格差」もなくなり、地域住民の健康を最高レベルに守ることが出来ます。
このような案に対して、地域医療を守ろう、○○病院廃院反対という署名運動が起こります。それは「健康格差」から見ても、本当に地域の健康を守ることにはならないことを認識して欲しいと思います。




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