Kensuke Esato,M.D.
江里 健輔
 
江里 健輔
山口大学名誉教授
山口県立大学学長・理事長
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風のとき(宇部日報)

優れた医療を受けたい NEW
2009年09月14日

優れた医療を受けたいが
山口県立大学理事長・学長
                         江里 健輔

「健康格差」という言葉をご存じでしょうか?
英国バーミンガム、パゴナ博士らは1997〜2007年に英国の5病院で手術を受けた44,902人(平均年齢65歳)について社会的貧困度と生存率について調べたところ、貧しければ貧しいほど、手術死亡が高いという結果を報告しています(メデイカル・トリビューン、2009,7,2)。
「健康格差」は人種や民族、社会経済力により健康状態や受ける医療の質に格差があるということです。健康格差は@病気の発生頻度A医療を受ける頻度B医療の質として現れてきます。我が国の国民皆保険制度は世界に冠たるものですので、健康格差が問題になることはあまりありませんが、あるとすれば、医療の質ぐらいでしょう。
最近、マスメデイはしきりに病院をランキングづけしています。このランキングがすべて正当とは申せませんが、参考になるのは確かです。
1例をあげますと、患者さんから「国立ガンセンターで治療を受けたいがどうすればよいでしょうか」
という質問をしばしば受けます。国立ガンセンターが山口県内の病院と比較して、特別に優れているとは思いませんが、最新医療機具やスタッフ数のような量において、両者の間に格差があります。しかし、ガンセンターで受診するには、交通費などいろいろな問題があり、必ずしも容易ではありません。
このように考えると、山口県民は東京および近郷の国民より不便な状態におかれていることになりますが、解消には病院を集中化するしかありません。例えば、人口約30万の宇部・小野田医療圏でも公的病院として美祢市立病院、美東病院、山陽小野田市民病院、山口労災病院、山口大学病院が、さらに、それに類する病院として宇部興産中央病院があります。それぞれの病院には最新医療機具を備えていますが、すべての疾患に対応出来るものではありません。従って、この圏内に国立ガンセンターと匹敵する大規模病院を一つ設け、他の病院は分院とすることで、最高レベルの医療を地域住民に供与できるようになり、ここでいう健康格差は解消されます。
このような案に対して、必ず起こるのが「地域医療を守ろう、○○病院廃院絶対反対」という署名運動です。しかし、現在のように宇部・小野田医療圏に中規模の急性期病院がパラパラと分散して存在することは、医療器具の分散、スタッフの分散と無駄が多く、真に地域住民の健康を守ることにはならないことを認識して欲しいものです。



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