Kensuke Esato,M.D.
江里 健輔
 
江里 健輔
山口大学名誉教授
山口県立大学学長・理事長
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風のとき(宇部日報)

取り戻そう日本人の特性 NEW
2010年01月01日

          取り戻そう日本人の特性
                 山口県立大学長
                      江里 健輔

新年あけましておめでとうございます。
今年は寅年です。寅年生まれの人は自分自身で運命を開拓するという宿命を持ち、35,36歳頃までは苦労が多いとされています。それにしても何年経ても苦労ばかりで、安穏とした時はありません。それに拍車をかけるように、手元にある某新聞の35面には「熊本の農家夫婦 殺害」、「市橋容疑者 大阪住み込む1年」、「島根・女子大生、胴・大腿骨もの発見」といずれも気の滅入るような記事で紙面が埋められています。
哀しいというよりはむしろ唖然とするあり様ですが、この日本はいつ頃から、どうしてこのような国になってしまったのでしょうか?
日本人には欧米人にはない「優しさ」を持っていることが特性の一つでしたが、その特性も失われかけています。この「優しさ」の原点は、農耕文明がもたらした、所謂、霊魂が草木など万物に宿るという伝統的な精霊説が人間を含む命あるものへの「優しさ」を育んできました。しかし、コンピューターや自動車を始めとするキー一つで何ごとも叶えられる文明が社会を機械化し、それが日常生活では当然に様になって、自然とのつながりを遮断し、自然への「優しさ」が失われ、今日(こんにち)のようなギスギスした社会に変貌したのです。山口県立大学では学生を徳地のような中山間地域に赴かせ、地域住民と生活を共にしながら、草取り、草刈り、田植え、稲刈りのような演習を通じて、自然の「優しさ」を体感させています。最初は冷ややかであった学生もやがて土のぬくもり、草木の匂いに興奮し、次第に、目が輝いてくる姿には子供のころ自然に否応なしに親しんできた大人の想像をはるかに絶するものがあります。
これからの日本を担う若者には機械化社会と調和しながらも、自然に触れ融和させることで、遮断された自然との繋がりを甦らせ、日本人の「優しさ」を取り戻したいものです。まだまだ今からでも遅くはないとこれから先の寅年に目線が映っています。



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