Kensuke Esato,M.D.
江里 健輔
 
江里 健輔
山口大学名誉教授
山口県立大学学長・理事長
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その他

植物から思うこと NEW
2010年01月31日

植物から思うこと
                

新年からとんでもない事に思いを馳せています。
動物は口から栄養を入れないと早晩死んでしまいますが、植物は栄養を取らなくてもどんどん生長します。今は、殺人、誘拐、詐欺、収賄などのような目を覆いたくなるような事件で新聞記事が埋め尽くされていますが、人間も口から食べ物を入れなくても生きることが出来れば、きっと、この世から争いがなくなり、理想の社会になると非現実なことを想像しています。
植物は動物と異なってじっと佇んで、自分で栄養を作りますし、花粉を使って、子孫を残しています。植物の栄養は太陽から光を浴びて、根から水分を吸収し、大気から二酸化炭酸を吸収して、光合成し、葉緑体が出来、それからでんぶんが作られ、養分がとおる師管に送られ、成長しています。すなわち、植物は自ずからが生産者ですから、動物のように移動しなくても、同じ場所でも生存し続けられるのです。しかし、植物は二酸化炭素を必要とし、動物は酸素を必要としますので、両者は相まってこの地球という星を保っているのです。両者のバランスが崩れてくると、植物も動物も生きられません。最近、環境破壊がこのバランスの崩壊に起因しているので、大きな問題になっています。
この植物の有り様が我々人間に教えてくれることが多いのはご承知と思いますが、その一つを紹介しましょう。
秋に桜の花が咲いた、狂い咲きだと報道を賑やかすことがありますが、これは一種の環境破壊と言えなくもありません。夏に毛虫が蔓延し、葉を食べ尽くしてしまいますと、桜の花は秋に咲きます。この理由は次のように説明されています。春咲く花の蕾は夏に出来ます。しかし、蕾は寒い冬に弱いものですから、蕾が「越冬芽」という形に変わり、冬を越します。「越冬芽」になるために情報を送るのが葉なのです。木の葉がやがて寒い冬がきますよと蕾に伝えますので、蕾は「越冬芽」となり身を守ります。従って、葉がなくなれば、この情報が蕾に伝わらないので、秋に蕾からそのまま花が咲くという現象が起こるのです。
一見なんでもない、吹けばどこでも飛ぶような浅薄な葉が綺麗な花を咲かせる原動力になっているのです。
我々は綺麗な花には注目し、歓声をあげますが、葉にはほとんどの人がまったく注目しません。
これを人間社会に例えれば、スターにはマスコミが注目し、報道しますが、スターをつくるために、その_で惜しみなく汗を出した支援者、サポーターには目が向きません。20年後には今の団塊世代が80歳代になられます。当然のことながら、ほとんどの人が病気に罹り、あるいは、自立出来なくなり、看護や介護者が必要となり、多くの社会福祉士や介護士が求められます。しかし、この人達の待遇はあまりよくありません。通常の職種の1年後の離職者の割合は15%内外ですが、社会福祉・介護者では20%を越えています。その理由の一つはこの職種の方々は木や花の葉のように、大切な、大切なサポーターでありながら、不良な待遇で、将来に何ら希望が持てず、更には、自分自身の家庭がもてないからです。今こそ、このような職種に光を与え、輝きのあるような環境にしておかないと、日本の福祉は益々貧困化していくばかりです。やがて、若者が興味を失い、注目してくれなくなり、人材不足となるのは必定でしょう。10年、いや、20年先を見越した施策を今しなければなり



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