Kensuke Esato,M.D.
江里 健輔
 
江里 健輔
山口大学名誉教授
山口県立大学学長・理事長
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癒やしのそよ風(ほうふ日報)

飲酒の影響は女性で顕著 NEW
2010年02月18日

飲酒の影響は女性で顕著
        山口県立大学学長
            江里 健輔

「酒は百薬の長」と言われ、ストレス解消あるいは食欲増進に役立ちますが、一方では「酒は百毒の長」とも云われ、徒然草には「百薬の長とはいへど、万の病は酒よりこそ起これ」との一節もあるように、その評価はさまざまです。
脳容積は加齢とともに減少しますが、その割合は10年間で1.9%と推計されています。そのために、思考、学習、記憶障害が加齢とともに著しくなるのは仕方ないことで、出来れば、脳容積の減少を予防する方法があればと願うのは当然ですが、促進するという報告もあります。それが酒です。
ウエルズリー大学のポール氏らは飲酒が多ければ多いほど大脳の全容積が著明に減少し、その傾向は男性より女性に著しかったと報告しています(Paul、CA,et al:Arch Neurol,2008,65,1363-7)。
では、どのくらいの飲酒量が適当なのでしょうか?
このことに関して、次のようなバーゼル大学病院のコネン博士らの研究報告があります。
45歳以上の女性3万4,715人を、酒を@全く飲まない、A1日1杯以下、B1日1杯以上、2杯以下、C1日2杯以上の4つのグループに分け、4年間経過追跡調査(平均12.4年)をしました。調査期間中に生じた心房細動(心房が規則正しく収縮しない、不規則に収縮・拡張する病気)発生率は@1.9%,A1.8%,B1.6%,C2,9%で、1日2杯以上飲酒すると心房細動発生率が高くなる結果がえられました。この調査を行ったコネン博士らは適切な飲酒量として「中年女性の場合、1日2杯以内」と述べています(Conen D.Tedrow:JAMA,2008,300;2489-2496)。
これらの二つの論文は飲酒量と脳容積、飲酒量と心房細動の関係を述べたものですから、同一視することはできませんが、少量の飲酒は脳循環を改善し、脳容積の減少を緩和し、中等度の飲酒は心血管疾患の発生率を減少させる効果があるとも云われていることより、飲酒量が良薬になるかどうかを左右しています。女性の場合、1日2杯以内がもっとも適量と云えるでしょう。
過剰の飲酒が肝臓、膵臓に悪いことは知られていることですが、以外に知られていないのが食道がんを引き起こす割合が高くなることです。日本酒をまったく飲まない人の食道ガン発生率を1とすると、日本酒を1日1合飲む人は6倍、2合飲む人は54倍という驚くべきデータがあります(http://tom.as76.net/health/gan_sake.php)。
このデータを思い出す度に、ビールはアルコール量が少ないからと云いながら、朝からビールを飲み、食道ガンで亡くなった友人が偲ばれます。「過ぎたるは猶及ばざるがごとし」ということでしょう。




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