Kensuke Esato,M.D.
江里 健輔
 
江里 健輔
山口大学名誉教授
山口県立大学学長・理事長
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その他

生涯に打つ心拍数は決まっているの? NEW
2010年02月28日

          一生涯に打つ心拍数は決まっているの?
                     山口県立大学学長
                          江里 健輔


ある日、友人が突然
「お前は医者だろう。ある新聞に、一生涯の間に打つ心拍数は大体、決まっているとあったが、本当か?」
「そうだよ。おおよその目安に過ぎんがね」
と答えると
「それによると、人の寿命は24億拍を1分当たりの心拍数で割った数になるそうな。その計算になると、俺の心拍数は大体1分間に60ぐらいだから、俺の寿命は約75年となる。そうすると、あと4年しか生きられないという計算になるが・・・、これ、正しいのか?」
と淋しい、元気のない電話でした。

そうなのです。一般に_乳類が一生の間に打つ心拍数は、ほぼ15億拍(回)ぐらいとされています。従って、大動物の寿命は小動物より長いのが普通です。東邦ガス診療所長の林 博史さんは1997年「心拍が速いとエネルギー消費量が多くなるので、寿命が短くなる。人間の場合、高度に脳が発達し、多くのエネルギーを必要としているため、他の_乳類のエネルギー消費量と比較して、やや長くなり、総心拍数は24億拍ほどになる」と提唱しました。65〜70歳の健康男性約1400人を対象に心拍数と生存年齢の関係を調べたところ、85歳まで生存した割合は心拍数が60回未満の人を1とすると、60〜80回の人0.86,80回以上の人0.58であったというフランスからの報告にもあるように、心拍数が少ない人の方が明らかに長命であります(読売新聞、平成21年3月13日付け)。
酒も飲まず、早寝・早起き、植物性蛋白を主食とした法然聖人や親鸞聖人の寿命はそれぞれ80歳、90歳と、この人達が生きた鎌倉時代の環境を考えますと奇蹟と言えるほど、長命であります。とすれば、心拍数を減らせば寿命が延びることになりますので、ウオーキング、サイクリングのような軽い運動が効果的であることになります。運動には有酸素運動と無酸素運動があります。無酸素運動は自己の呼吸では出来ないような激しい運動で、自己の筋肉まで消耗しまうので、害あって益なしです。有酸素運動は安静時の呼吸で出来る運動で、脂肪を消費しますので、極めて有用です。有酸素運動の目安は165から年齢を引いた脈拍数ぐらいになる程度の運動で、腕を振って、大またで速歩で、最低、20分以上歩くことです。
運動後には気分が爽快になり、達成感が得られたような気分になることは誰もが経験されているでしょう。これは運動すると、心を高揚させ、運動、情動、学習などの高次の脳機能を調節するドーパミンが沢山作られるからです。
理屈はともかく、加齢を重ねるほど、人体臓器の機能が衰え、ちょっと身体を動かしただけで心拍数も増えますので、年齢に即した運動を積極的に行い、健やかな日々であって欲しいものです。



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