Kensuke Esato,M.D.
江里 健輔
 
江里 健輔
山口大学名誉教授
山口県立大学学長・理事長
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その他

本当にあるの?男性更年期障害 NEW
2010年05月31日

            
本当にあるの?男性更年期障害
             山口県立大学学長(理事長)
                       江里 健輔
妻を亡くした友人から
「最近、気が滅入って、何もする気がしなくて困っているんだよ。これって、男性更年期障害の一種なのかなー。女性の更年期障害はよく聞くけど、男性のそれってあまり聞かないけど。そんなものあるの?子供達が『お父さん、もうちょっとしっかりしてね』と注文つけるんだ。その内、子供から粗大ゴミに扱われるのではないかと思うとぞっとするよ」
と電話してきました。
「男性の更年期障害ってないことはないが、女性ほどはっきりしないからね」
「体がだるくて、その上、食欲がなく、兎に角、何もやる気がしないんだ」
「まあ、病院で検査して貰って、体に異常がなければ、更年期障害と言えるかもね」
「そうか、更年期障害か?」
で、途切れました。
寿命が長くなるにつれて、これまで考えられなかった障碍が出てきます。ご承知のように男性はテストステロンという男性ホルモンを分泌します。95%が睾丸の中で、残る5%が副腎で合成、分泌されます。このテストステロンの分泌は加齢に伴って低下しますが、大体、20歳代で16.8pg/mL分泌されるのに対し、60歳代では8.5pg/mLと約半分しか分泌されません。従って、人によって、自律神経失調のような不定愁訴が出てきます。しかし、男性は女性のように症状が著明ではなかったので、なかなか認められませんでした。しかし、1940年代から欧米では「男性にも更年期障害がある」と提唱されはじめ、高齢化社会になるとともにその存在が認められるようになりました。
症状には大きく分けて三つあります。一つは顔のほてり、冷や汗、頭痛、めまいなどの女性の更年期障害に似た不定愁訴です。二つ目がうつ状態のようにやる気がしない、不安、不眠など気持に出てくるものです。三つ目が性機能障害です。いわゆる、男性の象徴とされる機能、勃起(ぼっき)、射精、性欲などの減退です。三番目の症状が二つ目を誘発することもありますが、男性シンボルの減退は自信喪失を招き、物事に対し興味が持てなくなります。診断は患者の訴えを聞いて、他の病気を否定できれば本症と診断されますが、客観的には採血してテストステロンを測定し、正常値の70〜80%以下になると本症と診断され、いろいろな症状も出てきます。問題はテストステロン値が低下しても、すべての男性に出現するのではないということです。若いころバリバリ仕事していた人ほど、年令に伴ってテストステロンが低下してくるに従い、症状が出ることが多いと言われています。逆に、若い頃から低空飛行状態で仕事をしてきた人にはこういう障碍が出る可能性は低いのではないかといわれています。
人間の「業(ごう)」とは悲しくもあり、哀れでもあり、あんまり頑張り過ぎても、歳をとるとそのお釣りが飛び込んでくるし、頑張らないで低空飛行の仕事ぶりでは更年期障害は飛び込んで来ないが、人生の質(QOL)は低下することになるし、誠に厄介なものです。
女性更年期障害にしろ、男性更年期障害にしろ、身体的老化は仕方のないことです。しかし、精神的老化はコントロール出来ますので、これをきたさないようにするには夫唱婦随、婦唱夫随で乗り切ることがもっとも大切な事ではないでしょうか?では、私の友人のような孤老な男性はどうすれば良いのでしょうか?気の休まる、又、休ませてくれるお茶のみ友達を見つけてなるべく人の輪の中に入るようにすることでしょう。



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