Kensuke Esato,M.D.
江里 健輔
 
江里 健輔
山口大学名誉教授
山口県立大学学長・理事長
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癒やしのそよ風(ほうふ日報)

前向きの感情が心疾患を予防 NEW
2010年06月18日

            前向きな感情が心疾患を予防
              

貴方の友人の中でしょっちゅう文句ばかり云う友達はいませんか?
私の趣味はゴルフですが、日頃からあまり練習していないので、スコアがよくないのは当たり前で、いつも「まあ、こんなものだろう。元気でゴルフが出来ただけ幸せだ」と思うように努めています。だから、スコアが悪くてもくよくよしません。しかし、ちょっとでも気にいらんことがあったりすると、仏頂面をし、1日中ぶつぶつ云いながら仕事をしたり、遊んだりする友達がいます。あんなに文句が多くては何をしても面白くないだろうなあーとか、又、とても長生きできないぞと同情したくなる時もあります。
コロンビア大学医療センター(ニューヨーク)心血管行動保健センター長のカリナ・デヴィドソンらは面白い研究結果を報告しています(Medical Tribune,2010,5,6)。彼らは健康成人1,739例(男性862例、女性877例)を10年間追跡調査し、肯定的な感情、すなわち、喜び、幸福感、興奮、熱意、安らぎなど快い感情経験を、「なし」から「きわめて強い」までの5段階に区分し、肯定的な感情を持っている人と持っていない人とで心疾患発生のリスク(危険度)を比較調査しています。それによりますと、肯定的な感情が1段階増すごとに心疾患発生リスクが22%低下することが明らかになりました。この結果より、カリナ・デヴィドソンらは「ふだんから幸福感、やる気、満足感を抱いている人は幸福感などを抱くことが少ない人に比べ、心疾患発症リスクが低く、その原因として、この人達では@生理学的に見て脈がゆっくりとなり、体の緊張を解きほぐし、休息あるいはリラックスしている時間が長い可能性があり、Aそのために、ストレスからの立ち直りが早いためであろうと述べています。
ある本に「毎日、楽しく会社に出勤する方法」と題して、非常識なコラムが掲載されていました。それは、心底、嫌いな上司がいて、その上司と毎日、毎日仕事をするのが嫌で嫌でたまらず、今日は会社をやめようか、やめようかと自問自答し、出勤していたそうです。所がある日、思い直して、「ひょっとしたら、今日は上司が死んでいるかもしれない、あるいは、ひょっとすると、大病にかかっているかもしれない」と毎朝考えるようにしたそうです。そう思うようになってから、何となく出勤が楽しくなったとのことです。顔を見るのも嫌いな上司を持ったサラリーマンがこのような不謹慎な思いを持ったとしても、彼はまったく悪い人間だと決めつけられない面もあり、同情を禁じ得ません。
第一線で働いている多くの人達には肯定的な感情を持つような心の余裕と時間がないと云われそうですが、そこは工夫です。1日、15分程度、何か気にいった本を読む、あるいは、音楽を聞く、散歩をする時間を確保するだけで、確実に身体の改善に繋がるのです。要は不足や過度ではなく、適度の調和が重要であるということです。
「毎朝、今日も何かいいことがあるぞ」、という肯定的な姿勢を持つよう努めてみましょう。



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