Kensuke Esato,M.D.
江里 健輔
 
江里 健輔
山口大学名誉教授
山口県立大学学長・理事長
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癒やしのそよ風(ほうふ日報)

不安な症状解消に運動を NEW
2010年05月20日

            不安な症状解消に運動を
              

歳を取るたびに階段を上がるのが苦痛になるとか、排尿のため、夜数回起きなくてはならないと訴えている方々が増えています。その理由は臓器の機能が加齢と共に衰えてくるからです。例えば、30歳の時の臓器の機能を100%とすると、70歳では心臓機能は約85%,腎臓機能は55%ぐらいに低下します。医学的には、加齢とともに表われてくる痴呆、譫妄、うつ、脱水、発熱、むくみ、頭痛、意識障害などの身体的、精神的諸症状を「老年症候群」といいます。このような症状が出るのは当たり前で、良くなることもありませんが、問題は“困った”、“困った”と嘆かれることです。いずれの症状も歳のためだと開き直って欲しいのですが、なかなか出来ることではありません。このような症状があるからと言って、病院で検査を受けても、異常ないと診断されます。しかし、現に症状があるので、本人は不安でなかなか納得されません。
では、このような思いを少しでも軽くするにはどうしたらよいでしょうか?
ジョージア大学教育学部のヘリング博士等は定期的運動で慢性疾患に伴う不安の症状を著明に軽減出来るという研究結果を報告しています(メデイカル。トリビュン、2010,4,15)。それによりますと、心疾患、多発性硬化症、がん、関節炎による慢性疼痛など、さまざまな慢性疾患を有する患者3000人を対象に定期的に運動させた群と運動させない群の2群に分けて不安症状軽減の頻度を検討したところ、運動群で非運動群より約20%軽減し、しかも、運動時間が30分超の方が30分以下よりより著明であったと述べています。彼等はこれらの結果より、「高齢化に伴い、慢性疾患を抱えながら生活する国民は年々増加すると考えられるため、低コストで有効な治療法が必要となってくるが、運動療法はまさにうってつけの療法である」と付け加えています。
患者さんが診療所で受診され、症状を訴えられますと、医師は医師としての責任と症状軽減のために薬を処方します。そのために、加齢とともに服用する薬が増え、80歳に達すると、10剤以上を服用しなければならない状態になります。どんな薬にも必ず副作用があり、すべて益ばかりではありません。10剤服用すると、副作用が100%出るという報告もあります。従って、抗ガン剤や抗炎症剤のように絶対服用しなければならない薬は仕方ありませんが、飲む薬は出来るだけ少なくすべきです。このように考えると、老年症候群のような加齢から生じるいろいろな不安定症状ぐらいで薬を飲む事は極力のでは慎むべきです。むしろ自ずから積極的に運動してみましょう。高齢者はまず散歩から始め、不安を少しでも解消する努力をしてみましょう。



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