Kensuke Esato,M.D.
江里 健輔
 
江里 健輔
山口大学名誉教授
山口県立大学学長・理事長
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風のとき(宇部日報)

どんな形でこの世と別れるの? NEW
2010年07月29日

             
       どんな形でこの世と別れるの?
            山口県立大学学長(理事長)
                     江里 健輔

「死とは何か」と話をするとほとんどの人が「縁起でもない、止めよう」といいます。しかし、この世に生を受けた途端、いずれこの世と別れなくてはならない時がまいります。多くの人達はずっと、ずっと長く人間であり続けたい、この世と別れたくないと願いますが、それもはかない夢に過ぎません。縁起でもないと怒られそうですが、ちょっと、どのような形でこの世と別れるのが幸せか考えてみませんか?
私達がこの世と別れる時、望むことは
@家族に見守れたい、
A家族に迷惑をかけたくない、
B家族にメッセージを残したい、
C苦しまないで、
などではないでしょうか?
どんなに医学・医療が進歩しても、死因の多くは脳卒中、心筋梗塞、そして、ガンです。直接の死因として、肺炎などが多いですが、その元となる病気はガンなどがほとんどです。そうすると、この三大死因のうち、上記の四つの要因を最も満足させる病気はどれでしょうか?
心筋梗塞は心臓の筋肉に血液を送る血管が閉塞し、血液の流れが途絶えて死に至る病気です。突然、胸の痛み、呼吸困難などの症状が現れて、死に至る場合、約数分から数十分です。しかし、もしもそれに対する治療が功を奏すれば、後遺症はありません。従って、家族に迷惑をかけたくない、苦しまずの要因は満たされますが、家族に見守れたいやメッセージを残すなどの要因は満たされません。
脳卒中は半身マヒや意識障害などが後遺症となることがありますので、家族に見守れたいは満たされますが、家族に迷惑をかけたくない、苦しまずなどの要因は満たされません。多くの場合、看護・介護が必要となりますで、家族に長年にわたり身体的、あるいは金銭的な問題を負担させることになります。このように考えますと、心筋梗塞や脳卒中などはこの世との別れとしてはあまり理想的とは言えないようです。
ガンはどうでしょうか?今日では多くのガンは死期が大体予想されます。従って、家族にも見守られ、メッセージも残せ、あまり迷惑もかけません。ただ、これまでは痛みで苦しむことが多々ありましたが、最近では、これらの痛みはコントロール出来るようになりました。ただ、当の本人が死期の迫る恐怖感から精神的に払拭されれば、上記のような要因が満たされる病気と言えるかもしれません。
どのような病気でこの世と別れるにせよ、上記の四つの要因を満たすような「健康老死」でありたいものです。



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