Kensuke Esato,M.D.
江里 健輔
 
江里 健輔
山口大学名誉教授
山口県立大学学長・理事長
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風のとき(宇部日報)

辛い、哀しい話です NEW
2010年10月30日

辛い、哀しい話です
              山口県立大学学長(理事長)
                       江里 健輔

過日、あるところで講演する機会がありました。講演終了後、医師として返答に困る質問を受けました。
57才ぐらいの女性の友達が右乳房に固いしこりがあることに気づいたので、近くの医師に診て貰いました。その医師は
「乳がんにしては固すぎるので、ガンではないでしょう。心配されなくて良いですよ。」
「そうですか。安心しました。ガンではないか、ガンではないかと明けても暮れても、そればかり考え、仕事が手につきませんでした。
で、病名は何でしょうか?」
「まあ、固いので、乳腺が石灰化し、骨のようになったのでしょうね」
その友達はすっかり安心し、生活にも活力が出てきました。3年後のある日、同級生が
「塊がお乳にそんなに長くあるって、おかしいよ。そのお医者さん、信用出来るの?別なお医者さんに診て貰ったら」
と申したので、乳房専門医を受診しました。そこで
「ガンですな。骨に転移していますね」
とはっきりした口調で告げられました。
「でも、私は毎年、医師にかかっていて、乳ガンではない、どうもないと言われているんですよ」
と話したそうですが、どうにもなりません。今は納得出来なければ、セカンド・オピニオンを受けるのが常識となっています。上手な医師のかかり方は、3週間を経ても病状が軽快しない、変化しない、むしろ悪化する場合は医師を変えるべきです。自分の身は自分で守りましょう、と本欄で強調してまいりましたが、このような話を聞く度に医療が如何に進歩しても、それを利用する患者さんも利口になって貰わなくては、と言う思いを改めて痛感しました。



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