Kensuke Esato,M.D.
江里 健輔
 
江里 健輔
山口大学名誉教授
山口県立大学学長・理事長
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その他

人生の終幕をどこで迎えますか?
2010年11月01日

  中国新聞(平成22年11月01)

        人生の終幕はどこで迎えますか?
                  山口県立大学学長
                       江里 健輔

WHO(世界保健機構)が定義するような、社会的にも、経済的にも、肉体的にも健康な状態など砂に書いた餅みたいなもので、わずかな期間しか存在しません。それであるのに、私たちは、健康であることが当然のように100%の健康を求め、かえって、その精神が不健康になっているのではないかと不安を感じることがあります。患者さんは高齢から生じる多種多様な症状がなくなることを望まれますが、これを一時的に取り去ることはできても、根本的に取り去ることは無理というものです。そうなると、このような症状と上手につき合い、人生の終幕を悔いなく迎える方法を見つけなければ、残された日々が暗く、輝きのないものになってしまうでしょう。
日本では年間約114万人が亡くなっています。20年後の2030年には数年前に団塊の世代を終えた人たちが80歳になられるので、160万人が亡くなると予想され、当然のことですが、医療を必要とする人たちが急激に増えてきます。
それに対し、政府は医療費抑制の面から自宅や老人福祉施設、介護保健施設などで療養することを勧めています。現在、特別養護老人施設への入居待ちは約42万人前後で、これは現在の施設定員数と同数で、このまま進めば、入居待ちがさらに増えてくるでしょう。一番望ましいのは家族に見守られながら、自宅で終幕することでしょうが、核家族が多い現在では資産のある方とか三世代が一緒に暮らしているような特別な家庭でない限り容易なことではありません。
ではどうすれば良いのでしょうか?
第一は、20年後を踏まえて、誰もが、何処でも直ぐに入居できる公的あるいは私的養護・介護施設を当局が積極的につくることであり、第二は、自分の終幕をどのように迎えたいかを元気な時に家族と相談し、その準備を(経費など)しておくことです。
終幕は深い悲しみに満ちた短調ではなく、モーツアルトの「ピアノ協奏曲第23番のような哀しくある反面、安らかな思いになるようなものでありたいものです。



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