Kensuke Esato,M.D.
江里 健輔
 
江里 健輔
山口大学名誉教授
山口県立大学学長・理事長
執筆情報 [詳細ページ]
その他

手術を受けることになりました(その2) NEW
2011年01月04日

            手術を受けることになりました(そのU)
             -楽観論者と悲観論者の葛藤-
                      山口県立大学学長(理事長)
                            江里 健輔

不安を抱えながら、平成21年2月、定期の人間ドックで、PSAの検査をうけました。検査を受ける場合はいつもそうですが、どうにかなるだろうという「楽観論者」とガンだったらどうしようという「悲観論者」の二人の健輔が登場します。後者の健輔はガンだったらどうしよう、仕事を休まなければならない、頼まれている講演もキャンセルしなければならない、と社会から断絶する自分の姿を描き、明るかった空が蓋をされたように暗い気持ちになります。その挙げ句、今、苦しくもない、食欲もある、まったく健康だ、検査受ける必要はない、今ここで止めておこうと思います。楽観論者の健輔は検査を受けても受けなくても、身体の中にガンがあれば消えてなくなることはなく、むしろ、どんどん成長する、いずれガンの症状が出る、蓋を仕切れるものではない、そうであれば、どうなってもいいや、どうせ死ぬんだ、少しでも早いほうが良いのだと半分諦めて、検査を受けることになります。この二人の健輔が葛藤し、最後には楽観論者の健輔が前に一歩踏み出し、検査を受けることになります。これには私が医師であることが大きく影響しています。早期であれば助かるガンでありながら、末期のために尊い生命をなくされた多くの患者さんに出会っているからです。しかし、医学・医療に無知であれば、一日、一日と先延ばしになっても仕方のないことかもしれません。PSAの検査の結果、8.5ng/mlと前回より、2.0ng/dl高くなっていました。とうとう、ガン鬼がやってきたなと担当医に相談しましたところ、前回と同じような返事で「学長の場合、炎症があり、年令も70歳ですので、その影響が強いと思われます。しかし、気になるのであれば、3ヶ月後にもう一度調べてみましょう。それで、高くなっていれば、組織検査をしましょう」と言われ、「そうかな、専門医の意見だから」ということで、3ヶ月後に再度検査しました。すると、なぜか値が8.2ng/dlに低下していました。ガンであれば確実に上がり、下がることは絶対ないと確信し、限りない安堵感と開放感を覚えました。そのうち、年が明けて、定期人間ドックを受ける2月になりました。悲観論者の健輔が今、ガンが見つかると、3月の卒業式で卒業訓辞が出来なくなる、それでは学長の責務が果たせなくなるぞ、少し延ばしたらと言いますので、卒業式が終わった3月に受けました。値は10.3ng/dlでした。担当医は「どうも怪しいですね。まあ、念のため、今度は抗生物質を2週間飲んで貰い、それでもう一度検査しましょう」とアドバイスされ、2週間後に検査受けました。結果は12.4ng/dlと下がるどころか上がっていました。さすがの担当医も「上がりが急峻なので、ガン鬼がいる可能性が大きいですね」と話され、3回目の組織検査を受けることになりました。受けると決めたからには早いほうがよい、明日出来ないだろうかとお願いしました。担当医はあきれてとても医者で、その上、長年、外科の教授をしていた人の発言ではない、信じられないという表情で「それは無茶ですよ、早くても1週間後になります」ということで、6月23日入院検査となりました。この1週間は悲観論者がどろどろとした感情で、身体の中をもがきながら駆けめぐっていました。
医学知識のある医師でも、ガンの前では単なる患者さんに過ぎない、いや、いやそれ以下かも。全く情けない一言です。この1週間の長さは例えようにないほど長いものでした。
その結果は次号へ・・・



[ もどる ] [ HOME ]