Kensuke Esato,M.D.
江里 健輔
 
江里 健輔
山口大学名誉教授
山口県立大学学長・理事長
執筆情報 [詳細ページ]
風のとき(宇部日報)

見極めよう、本音とたてまえ NEW
2011年04月11日

             見極めよう、本音とたてまえ
              山口県立大学学長(理事長)
                       江里 健輔
手術される患者さんには担当医が術前に必ず説明をします。
患者:「先生、大丈夫でしょうか?麻酔から覚めないという事はないでしょうか?」
担当医:「まあ、普通の場合、大丈夫でしょうが、まあ数2〜3%の危険があります」
患者:「2〜3%の危険って、死ぬるってことですか?」
このような会話は患者さんと医師との間ではしょっちゅう行われています。この場合、医師の本音は前者で、後者は万が一起こる可能性もあるので、その場合を想定したある種の責任逃れの発言です。何故ならば、医療はいつも!00%安全ではない、絶対的ではないからです。最終的に手術をうけるかどうかは患者さんが担当医を信頼するかどうかで決まります。
この度の東北関東大震災では国民を惑わせる情報が沢山ありました。例えば、原発事故による当該地の野菜出荷制限、摂取制限についての政府見解です。「ただちに健康被害は出ない」、「ただ、状況継続が予想されるなかで、できるだけ摂取しないことが望ましい」。一体、どちらを選択すれば良いのでしょうか?
「ただちに健康被害は出ない」は科学的根拠に基づく見解であり、後者は万が一のことを考えた上での政府の責任のがれの見解です。何故なら、科学的根拠といえども、絶対的ではないからです。そのために、政府は何か異常なことが将来発生したときに、それ故「望ましい」と申したではありませんか?と開きなおる口実を作っておきたいという気持があるからです。
しかし、これでは安心・安全を満たす情報ではありません。後者に「1日○グラムを○日以内の摂取にとどめるべきである」という見解をつけ加えるべきです。
この世の中で何ごとをするにも、人は絶対の確信を持つべきであると云われていますが、人そのものが不完全で、不条理でありますから、絶対的確信など持てる筈がありません。だから、詳しい情報を共有し、お互い助け合って、不十分なところを補って生きて行かねばならないのです。
東京で新製品が発売され、長い列ができた光景が放映され、すごい人気のある製品と思っていたら、列をなしていた人達は会社が雇用したアルバイトであったと笑うに笑えない話があります。インターネット時代になり、情報が洪水のように押し寄せ、どのような意図で、誰が何処で流布したものか、さらに、真実であるかどうかを判断することは極めて難しい世の中です。しかし、今、私達に必要なことは情報を的確に判断できる能力をたえず備えていることが必要であり、そのためには日頃からお互いが緊密な連絡を取り合える人間関係を持つことが必要です。




[ もどる ] [ HOME ]