Kensuke Esato,M.D.
江里 健輔
 
江里 健輔
山口大学名誉教授
山口県立大学学長・理事長
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癒やしのそよ風(ほうふ日報)

「眠れない」お年寄りの方へ NEW
2011年05月21日

            防府日報
          (平成23年5月15日)
    
        「眠れない」お年寄りの方へ
              山口県立大学学長(理事長)
                       江里 健輔

いきなり私事で恐縮ですが、この数年、眠りが浅く、うとうとし、朝起きてもすっきりせず、まぶたのけだるさを感じます。家内に「熟睡できんなあ」と申しますと、家内は「ぐう、ぐう、鼾をかきながら、眠りが浅いなんて。私こそ、貴方の鼾で睡眠不足で」と逆に怒られる始末です。このような話を友人に話すと、「俺も」、「俺も」と、同じような感じを持っている人が多いのにびっくりします。
「就眠、暁を覚えず」とはまったく別な世界に生きているようで、目が覚めるといつも外は暗い、部屋のなかはしんとし、ひとりぼっちになったようで、孤独に苛まれます。一度でもいいから、太陽がガンガン照っているような世界で目を覚ましたいと思う毎日です。
最近、「眠れない」と訴える年寄りには「起きているように」という奇妙な見出しのコラムに出合いました(井原 裕氏:メデイカルトリビューン、1,13,2011)
それによりますと、「全然眠れない」、「ちょっと寝ただけですぐ目が覚める。その後一睡もできない」と訴えるお年寄りの多くは病的な不眠ではなく、生活のアンバランスからくるもので、そのアンバランスを修正することでほとんど解決するとのことです。すなわち、高齢者の不眠の訴えは、その原因の多くが「早すぎる就床」とのことです。そう言われれば、私も特別なスケジュールがない場合には大抵夜9時には床のなかです。この時間に就床し、眠りに入ってしまえば、午前2時とか3時に覚醒するのは当然です。何故なら、歳を重ねるとともに睡眠時間が短くなるからです。最大7時間が限度とされ、若い時のように10時間もあるいはそれ以上に眠ることはお年寄りでは異常な時です。このように考えると、太陽が出ないうちに覚醒するのは自然で、健康なのです。お年寄りの「不眠」の訴えは、本質は「不眠」ではなく、「みんなが眠っている時間に自分1人だけが起きていることの不安」、さらには、「自分だけが他の人と違う、異常だ」と思うことです。
では、どうしたら良いのでしょうか?
著者の井原氏は不眠を訴える人に
「朝、何時まで眠っていたいのですか」
と訊ねるそうです。そして、朝「6時」という答えが返ってきたら、7を引いて、
「では、午後11までは布団に入らないで起きていましょう」
とアドバイスするとのことです。
多くの人達は不眠と訴え、すぐ、睡眠薬に頼られますが、やがて、睡眠薬依存症が出来上がります。最後は薬を飲まなくては寝られなくなります。充分覚醒しないまま、トイレに行き、倒れて、大腿骨骨折という話は日常診療では稀ではありません。不思議に不眠を訴える人は誇張が混じっています。「ここ数カ月、3時間以上眠ったことがない」とか「最近、一睡もしていない日が多い」とか。その割に顔色も良く、表情も豊かで憔悴しきっておられません。
眠れない時には睡眠薬を飲まないで、遅くまで起きていましょう。そのうち、本当に睡眠不足であれば必ず睡魔が襲ってきます。まずは「眠れない」のは異常なことではないと思うことです。



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