Kensuke Esato,M.D.
江里 健輔
 
江里 健輔
山口大学名誉教授
山口県立大学学長・理事長
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癒やしのそよ風(ほうふ日報)

どうなる我が故郷 NEW
2011年06月17日

            防府日報
           (平成23年6月)

      どうなる我が故郷
       山口県立大学学長(理事長)
              江里 健輔

中学校のクラス会で久しぶりに故郷(長門油谷)に帰った。友達がこんな話をしてくれた。
「田畑が荒れ放題。猿、猪、鹿が道を我がもの顔に歩いている。山に餌がないものだから、餌探しに野原に出てきたのだ。これも政府が杉、松、檜などの針葉樹の植樹を推進し、雑木林がなくなって、ドングリとか椎の実がなくなり、食べ物がなくなったせいだ。この田舎にも、水産業など小企業の会社はあるが、そこの従業員はすべて若い中国の女性。毎日、朝市があり、その買い物に自転車で市場まで自転車で通っているが、その中に日本人の若者は一人もいなくて、中国語が飛び交い、まるで、中国にいるような錯覚に襲われる。困ったものだが、俺達ではどうすることも出きん。その上、川の上流が荒れ果てているため、海水に異変がおき、魚の生態が変わったということだ。山も川も昔の面影はなくなり、このままではゴーストカントリーになるのは目に見えている。田舎の自然が崩壊すると、間違いなく、田舎が支えている街が次第に崩壊していく。政府が大きなビジョンをもってこの国を守るような施策をしない限り、将来が思いやられるよ。お前のような山陽に住んでいる奴には頭で分かっていても、肌で感じないから、うわの空じゃろうが」
と。
「じゃ、どうしたらいいと思うか?」
と問いかけると
「若者を田舎に住ませるようにすることじゃ。ただ、田舎に住めというても、生活できんにや田舎に帰れという方が無理じゃ。家族4人が楽に暮らせるような環境を用意すれば、必ず帰って来るよ。でも、農業だけで4人家族を養うのは大変じゃけ。今、一反から米が8俵から10俵できるんだが、米の値段が安くてどうしようもない。大体、一俵1万4千円から1万8千円の計算になる。一町歩(10反)、米を作っても、たかだか140万円から180万円にしかならない。三町歩作っても,420万円から540万円の年収にすぎん。いくら機械化したというても三町歩の稲作は大変な労働で、今の若者にはとても勤まらん。こう考えると、専業農家で生計を立てることは夢の夢だ。大都会一極集中をどうかしなくちゃ、どうにもならんよ。だって、戦後、日本の人口は九千万余人であったが、田舎にも人が一杯溢れていた。今は1億2千万人いても田舎がどんどんさびれていくのだから、産業国がもたらした副産物そのものだよ」
であった。
彼の話しをじっと聴いていて、都市一極集中を何とかコントロールするなど、崩壊しつつある自然環境に当局は何らかの歯止めの手を尽くさなければ、「故郷」という言葉も死語になりかねないと悲しくなった。




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