Kensuke Esato,M.D.
江里 健輔
 
江里 健輔
山口大学名誉教授
山口県立大学学長・理事長
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癒やしのそよ風(ほうふ日報)

腹八分に心がける NEW
2011年07月16日

            防府日報
         (平成23年7月16日)

          腹八分を心がける
             山口県立大学学長(理事長)
                       江里 健輔

昔から「腹八分に医者いらず」という諺があります。むやみに大食したりせずに常に腹八分くらいであれば、いつも健康で病気にかかることはないということですが、多くの読者は「そんなことぐらい知っているよ。常識だよ」と申されるでしょうが、その理屈となると知られない方が多いでしょう。
研究者というものは面白い研究をするもので、「腹八分に医者いらず」を科学的に検証した報告があります。
いろいろな生き物に通常の食を与えた群(通常食)とカロリー制限食を与えた群(制限食)の2つの群にわけたところ、平均寿命は原生動物では通常食群7日であったが制限食は13.3日(1.9倍)、ミジンコではそれぞれ30日、51日(1.7倍)、サラグモ50日、90日(1.8倍)、グッビー33ヶ月、46ヶ月(1.4倍)、ラット23ヶ月、33ヶ月(1.4倍)と制限食の生き物が1.4倍から1.9倍長命であったのです(クリニシアン、594,19-24,2011)。
このように、食事を制限すると長命になる理由はカロリー制限で細胞内の酸化ストレス(細胞膜が障碍を受け、細胞死をきたすこと)が抑制されるので、加齢性疾患による死亡率やガン、動脈硬化性疾患、糖尿病などの発生率がそれぞれ低くなり、特定部分の脳萎縮が抑制されるためとされています。
このように書くと大変難しいように思われるかもしれませんが、一言で言えば、食べ過ぎは胃腸・消化器系の内臓への負担が過度になるためにいろいろな障碍を全身に発生することになるわけです。通常、ご飯などの炭水化物はアルカリ性胃液で消化され、肉や魚などの蛋白質は酸性胃液で消化されます。従って、炭水化物とタンパク質を大量に摂るとアルカリ性と酸性の胃液が同時に胃の中に分泌されるので、胃液が中性になってしまいます。胃液が中性になると消化機能が低下するので、消化に長時間かかります。消化時間が長くなればなるほど、消化器内臓への血流量が増えますので、他の臓器への血流量が相対的に減少します。臓器への血流量が減少すると酸素が足らなくなり、脳の場合では頭の回転が鈍くなり、次第に眠たくなるのです。お腹が一杯になると眠たくなるのはこのためです。従って、寝ると脳があまり酸素を必要としませんので、睡眠中に酸素が十分補われ、目覚めると目がぱっちりとして頭もすっきりするのです。大量摂取が日常になると臓器への血流不足が遷延されることになり、さまざまな疾患を発生することになります。
腹八分の食事を習慣とし、カロリーがオーバーになり易い外食は週に1〜2回に抑えることが長命の秘訣の一つと言えそうです。




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