Kensuke Esato,M.D.
江里 健輔
 
江里 健輔
山口大学名誉教授
山口県立大学学長・理事長
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癒やしのそよ風(ほうふ日報)

健康と高齢者の買い物 NEW
2011年09月18日

        
 
            健康と高齢者の買い物
                     山口県立大学長                                                       
                         江里 健輔

「お母さん、今日の予定は?」
「午後、買い物に出かけるつもりよ。お父さん、どうする」
「家でテレビやDVDでも見て、呑気に過ごすよ」
これが中高年夫婦の日常会話で、買い物は妻の、母の仕事と考えるのが通常でした。しかし、買い物を女性だけに任せる時代ではなくなったようです。
最近、買い物に頻繁に出かける高齢者は死亡リスクが低いという研究が報告されました。台湾国立衛生研究所のユー・フン・チャン博士らは1999〜2000年に高齢者の栄養・保健調査のデーターを用いて買い物に出かける頻度と死亡リスクの関係について検討しています(メデイカル・トリビューン、2011,5,19より引用)。
在宅で経済的に自立生活を送っている65歳以上の1,841人を対象(回答者の54%が男性、62%が72歳以下)に買い物に行く頻度、健康行動、身体機能、認知程度を調査しました。1週間のうち、買い物に「全く行かない」あるいは「頻繁に行かない」が48%、1週間に2〜4回」が22%、「毎日行く」が17%,
「1週間に1回」が残りの13%でした。その結果、毎日買い物に行く高齢者では、ほとんど行かない(1週間に1回以下)高齢者に比べて死亡リスクが少ないという結論でした。さらに、毎日買い物に行く女性とほとんど行かない女性との死亡リスクの差は23%であったのに対し、男性では28%と買い物に行く頻度が高いほど、死亡リスクが低く、買い物に行くことで得られる便益は女性より男性で大きかったとのことです。
では、何故このような結果になったのでしょうか?
多くの男性は現役の時には仕事、仕事で人間関係は「仕事」というキーワードで結ばれていました。しかし、退職に伴い、このキーワードがなくなり、人間関係、さらには社会との関係が希薄になります。それに伴い、残りの「人生」の中では、生き甲斐が見失われ、死亡リスクが高まるものと考えられます。そのようななかで買い物に行くという簡単な行動が好奇心、店舗での友人や仲間との交流を高めることになり、健康増進にも大きく寄与することになるのでしょう。今や、買い物に行くことは女性の占有ではなく、高齢者男性も積極的に戸外に出て、地域の人々と人間関係を保つことが長生きに繋がるとすれば、頻繁に買い物に出かけることを心がけたいものです。



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