Kensuke Esato,M.D.
江里 健輔
 
江里 健輔
山口大学名誉教授
山口県立大学学長・理事長
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癒やしのそよ風(ほうふ日報)

病気と闘おう NEW
2011年10月14日

            防府日報
         (平成23年10月14日)

      患者さんへ、病と戦う心を駆りたてよう
     山口県立大学学長
江里 健輔

いきなり私ごとで恐縮ですが、数年前、マルトという一種の悪性リンパ腫にかかりました。その治療について、内科医はピロリー菌が胃にいるので、ピロリー菌の除菌が有効であると主張し、放射線医は胃に放射線を照射するのが一番効果があると、外科医は腫瘍を含めて胃切除するのが確実で最も優れていると教えてくれました。このように、専門医は自分の領域には高度な医療知識を持っていますが、一歩、専門分野から離れると「専門ではないですから」と、患者さんを総合的に判断するのを避けようとする傾向があります。医師の私でさえ、いろいろな専門医からさまざまな治療法を勧められると、感情が優先し、理性が失われ、治療法の選択に苦慮します。その時、客観的な立場より最適な治療法を総合的に判断し、前向きになるよう勇気づけてくれる医師に出会いたい気持ちでした。そのようなことで、医学的知識のないあるいは少ない患者さんに最適な治療を選べということは誠に酷なことです。
医学・医療が進歩するにつれて、専門化がますます進みましたが、それでも、心のあり方が病気の治療に重要であることが言われ続けています。すでに、1984年、同じ程度のガン患者の場合、闘争心で対応した人の10年生存率は85%,病気を否定した人55%,冷静に受容した人27%、絶望感を持った人20%と闘争心を持った患者さんに高い生存率が得られ、ガン患者の生存率は心の状態に左右されると報告されています(ペッチンゲート等、1984;28:363-364)。闘争心を持っている患者さんは一般的に積極的で新しいに医療を受け入れ、免疫力を高めるために、いろいろな方法に取り組んでいる姿勢があるからだとされています。
そのようなわけで、心と体を一体化して診れる医師、すなわち、総合診療医とか統合診療医が求められるようになり、約12年前に国際統合医学会が発足しました。今年は沖縄宣野湾市で開催され、興味ある報告がなされています(メデイカル・トリビュン、2011年7月7日より引用)。統合医療は、千差万別の症状・訴えを持つ患者に対し、個別医療を実現するための1つの手法であり、マニュアルを患者に当てはめるのではなく、まず、患者の意見に傾聴して症状を把握してから、人間全体(心と体)にアプローチし、診断と治療を一体化して、ライフスタイルを見直していく医療体系であります(統合医療センタークリニック宜野湾・天願会頭)。
末期ガンの患者が人間らしく生きるには、QOLを維持しつつ、自己権威を失わないよう、病気と闘う意志を堅持させる。一方では副作用が少なく、自然治癒力を高めるようなライフスタイルを提供するような医療が望まれます。しばしば、「ガンと闘わない医療」が最高のように主張されていますが、統合医療医のサポートを受けながら、患者の価値観、家族を含めた生き方を尊重し、絶えず、前向きの姿勢を失わないようにさせる、「病気と闘う」姿勢が重要と思うのですが・・・




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