Kensuke Esato,M.D.
江里 健輔
 
江里 健輔
山口大学名誉教授
山口県立大学学長・理事長
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風のとき(宇部日報)

胃瘻付けたほうがよいでしょうか? NEW
2011年12月12日

          

      胃瘻付けたほうがよいでしょうか?
            山口県立大学学長・理事長
                     江里 健輔

メール相談です。
「私の母親は87歳です。長期療養施設に入所しています。栄養は鼻腔からです(管を鼻から胃に入れて、その管から流動物を注入し、栄養を補給する方法)。施設のスタッフの話では『この方法だと頻回に誤嚥性肺炎を起こすので、胃瘻(内視鏡で胃に穴を開け、腹壁に固定し、管を腹壁から胃へ挿入する。栄養はこの管から注入する)をつけた方がよいと思いますが、どうしましょうか?決めて下さい』と問われましたが、どうしたものでしょうか?私達が見舞いに行っても誰がだれだか分からない状態です。と言って、何もしないわけにもまいりません。先生だったら胃瘻をうけさせますか」
という相談でした。私の父は94歳まで生きました。最後は食事に中に毒が入っているという妄想にさいなまれ、食事を摂らなくなりました。カテーテルを通じて高カロリーを与える中心静脈栄養法や胃瘻という方法が当時でもありましたが、苦しめるだけと静脈点滴で生命を維持する方法を行いました(この方法では生命を維持だけのカロリーを与えることは出来ない)。今でも、あの時、胃瘻を作って栄養を与えておけば数年は生き延びたであろうという悔いが残っています。
私の答えは
「「命」をどのようにとらえるかで胃瘻をうけるかどうか決まりますね。「命」(命とは生物が生きていくための力となるもの)を「生命」(生命とは生物が生物であり続ける根源、活躍し続ける根源)とみれば、お母さんには「命」はあるが、「生命」があるといえますか?そうなると結論は自ずから決まってきますね」
でした。
今では老衰の果て、7割の人が胃瘻を付けて生きながらえていると言われています。食物を飲み込めない患者にとって、唯一の延命処置は胃瘻です。確かに、有用な方法ですが、老衰で回復の見込みのない人まで胃瘻を造設し、延命することが意味のあることかどうか、自然死の方がよいのではないか、などなど疑問が残ります。
医学・医療が進歩するにつれて、自然死が出来ないようになりました。今、どのような「死」を迎えるかは個人に課せられた重要な問題となっています。
皆さん、口から食べられなくなったらどうしますか?




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