Kensuke Esato,M.D.
江里 健輔
 
江里 健輔
山口大学名誉教授
山口県立大学学長・理事長
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癒やしのそよ風(ほうふ日報)

社長は長生きする NEW
2012年02月28日


社長は長生きする
             山口県立大学学長(理事長)
                      江里 健輔

「モーレツ上司が心臓発作を起こして、仕事中にポックリ逝く」という話はしばしば聞かれた事があると思います。そうだとすれば、社長さん達の寿命は一般の人達より短いはずですが、そうでもなさそうです。ロンドン大学のマイケル・マーモット教授の研究によれば、選択の自由度をどのように認識しているかが健康に大きく影響していると報告しています(シーナ・アイエンガー:選択の科学、櫻井裕子訳、文芸春秋より引用)。それによると、収入の高い仕事をしている人ほど、仕事に対するストレスが大きいにも拘わらず、心筋梗塞や狭心症のような冠動脈(心臓に栄養を送っている血管)の病気で死亡する確率は、収入の低い職業階層の3分の1と低かったという予想に反する結果であったそうです。この理由にはいろいろ考えられますが、マーモット教授は収入の低い階層の人達は収入の高い階層の人と比べ、喫煙率や肥満率が高く、生活習慣病を改善しようとする士気が乏しいこともあるが、最大の理由は収入の高い階層の人達にとって、ストレス解消にもっとも役立っていることは、仕事に対する自己決定権があるということだそうです。即ち、会社の利益責任を負うことは、たしかに大きなストレスになるが、それ以上に、仕事上で、裁量権が小さいあるいはないことがストレスを高かめると述べています。事実、この研究では、仕事に対する裁量権がほとんどない人に勤務中の血圧上昇や精神疾患率が高く、更に、背中のコリ、腰痛、などの訴えが多かったとのことです。
動物園で飼育している動物は自分でエサを探す必要もなく、生活環境が整えられ、どうみても野生より生活条件が良いにもかかわらず、寿命を縮めることが多あります。例えば、野生のアフリカ象の平均寿命は65才であるが、動物園で生まれた象は17才であると報告されています。これはいくら動物園の環境を自然生息環境と同じようにしても、野生で経験するような刺激や、生来から備わっている自然な本能を発揮する機会はほとんどなく、一種の監禁状態なようなもので、これが、ストレスになって、動物園の動物の寿命を短くしているようです。
人間はそのときどきの状況に応じて見方を変える、考えを変えることが出来、いろいろな選択権を使える能力を持っています。ですから、自分はで手に負えないように思えても、何事も不可抗力にせず、自分の力でなんとかするという気持ちを持つことで、選択権が増し、より健康的な幸せを送ることが出来るようになると言えます。



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