Kensuke Esato,M.D.
江里 健輔
 
江里 健輔
山口大学名誉教授
山口県立大学学長・理事長
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癒やしのそよ風(ほうふ日報)

ご存じですか?統合医療
2012年03月21日

          
         ご存じですか?統合医療
           

膵臓ガンはガンの中でももっとも予後が悪く、ガンを完全に取り除くような手術(根治手術)を受けるかどうか悩む病気の一つです。私も多くの手術をさせて貰いましたが、残念ながら、膵臓ガンの手術結果はあまりよくありませんでした。忘れられないのは、膵臓ガンに罹った二人の友人のまったく異なった対応です。一人は最後まで手術せず、抗ガン剤などを服用し、QOL(生活の質)を低下させないで、あまり苦しまず、死を迎えました。一方の友人は性格がさっぱりし、ガンが自分の身体の中にありながら、生きるのは到底耐えられないということで、手術を受けました。この手術は膵臓、十二指腸、胆嚢、そして、胃の一部を取り除くので、大手術です。彼は、術後、下痢や腹部膨満感など手術の後遺症に悩まされ、かなり苦しみながら、亡くなりました。QOLを低下させずに、しかも、長く生きたいと思うのは人間の常ですが、膵臓ガンだけは根治手術を積極的にすべきかどうか考えものです。むしろ、姑息手術(症状を取り除く手術)に止める方が良い選択ではないかと思います。
最近、「緩和医療」ではない「統合医療」が注目されています。「統合医療」について、天願 勇院長(統合医療センター・クリニックぎのわん、沖縄)は、「千差万別の症状・訴えを持つ患者に対し、個別医療を行うための1つの手法でマニュアルを患者に当てはめるのではなく、患者の意見を傾聴して、症状や悩みを把握してから、人間全体として診断・治療を一体化して、ライフスタイルを見直していくと言う医療体系である」と説明しています(Medical Tribune,2011,7,7)。統合医療は、食事療法を基本としつつ、免疫療法、サプリメント療法、温熱療法、アロマ療法を活用し、QOLを損なわず、自然力を高める医療と説明されています。病気の予後は患者の心理と関連しているという研究報告(Pettingate:J.Psychosomatic R,1984,28,363-364、Medical Tribune,2011,7,7より引用)によると、闘争心で対応した人、病気を否定した人、冷静に受容した人、絶望感を持った人の10年生存率はそれぞれ、80%,50%,20%,10%台であったとのことです。最後まで、希望を失わず、病気に直面した方が予後が良いと断言出来そうです。
医学・医療が進歩し、質の高い医療を受けることも大切ですが、「統合医療」のような、病気によって、治療効果の限界を見極めて、患者の価値観、家族を含めた生き方を尊重するような医療の重要性は高齢化社会では益々必要とされるでしょう。



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